使用済みおむつ 進む「園で処分」 持ち帰り見直し 家庭は歓迎

写真はイメージ(プラナ / PIXTA)

おむつを保護者が持ち帰るのではなく、保育施設で処分する方式に注目が集まっています。道内では都市部の公立保育園などで施設処分への切り替えが進んできました。民間施設や持ち帰りで対応していた自治体でも、保護者の負担軽減や衛生面を考慮し、施設での処分に切り替えたり、変更を検討したりするところもあります。専門家は「ウイルスの感染拡大を防止する観点から、施設での処分が理想」と話します。

地下鉄、バス利用の保護者に好評

札幌市白石区の認可保育所「保育室すまいる」(園児11人)では排尿の回数などを保護者に把握してもらうため、7月まで保護者におむつを持ち帰ってもらっていましたが、今月から園での処分に変えました。施設長の小川愛さん(49)は「昨冬の大雪の中、保護者が持ち帰る姿を見て、金銭的な負担をしてもらっても園で処分する方が保護者のためになるのではと感じました」。

札幌市白石区の認可保育所「保育室すまいる」では8月から、施設でのおむつ処分に切り替えた。保育士がまとめてごみ箱に捨てる

札幌市白石区の認可保育所「保育室すまいる」では8月から、施設でのおむつ処分に切り替えた。保育士がまとめてごみ箱に捨てる

処理方法や処理代の収支を検討の上で導入し、おむつ処理代は1カ月100円を徴収。おむつの廃棄量は1日に付き園児1人3~6枚で、園全体で1日20リットルのごみ袋1枚を使います。尿の回数は連絡帳に記入して保護者に伝えています。

園によると、保護者からは好評といいます。男児(1)を預けている札幌市厚別区の女性(34)は「地下鉄とバスで通園しているので持ち帰りは大変だったので、よかったです」と話していました。

7月末までは保護者に持ち帰ってもらうため、各子どものケースに使用済みおむつを保管していた

7月末までは保護者に持ち帰ってもらうため、各子どものケースに使用済みおむつを保管していた

保育士と保護者、双方の負担軽減

子育て支援事業を行うベンチャー企業「BABY JOB」(大阪市)が今年2~3月、全国の公立保育園を対象におむつ処分について電話で調査しました。道内で持ち帰りを行っている市町村は24%で、都道府県別では12番目に持ち帰る割合が少なかったです。コロナ禍で感染対策としても、おむつの持ち帰りを見直す機運は高まっているといいます。

札幌市は2007年には、当時23あった公立保育園の全てで、おむつを園での廃棄にしました。市子ども未来局子育て支援課によると、紙おむつが主流となって保護者から「持ち帰りは負担が重い」との声が高まったためといいます。同課は「認可保育所などでも年々持ち帰りは減っています」と説明します。釧路市、帯広市も同様の理由で公立保育園での持ち帰りをやめました。

衛生面を考慮し旭川市は17年、留萌管内天塩町は今年4月から園での処分に変更。上川管内鷹栖町は昨年6月、保育士と保護者の負担軽減を理由に園での処分にしました。

現在、持ち帰りで対応している十勝管内足寄町は「保護者負担と感染症予防を考え、園での処理を検討しています」といいます。

一方、保管場所などの関係などから持ち帰りを続ける自治体も。上川管内和寒町も「園での処分が理想ですが、保管場所や費用、ごみ収集日が限られているなどの問題があります」と説明します。歌志内市は「臭いや衛生面から、園に何日も置いておけないです」としています。

札医大公衆衛生学講座の大西浩文教授(52)は「おむつ交換は新型コロナをはじめ、便の中のさまざまなウイルスが口から体内に入る『糞口感染』のリスクがあります」と指摘。「感染拡大防止の観点からは、使用済みおむつを持ち運ぶことは控え、保育施設で処分するのが望ましいです」と話しています。

持ち帰りに60%が否定的

北海道新聞の子育てウェブメディア「mamatalk(ママトーク)」が、保育園などでの使用済みおむつの持ち帰りについて保護者にアンケートをした結果、60%が持ち帰りには否定的でした。

アンケートは7月13~20日にウェブで行い、20~50代の113人が回答しました。

ママトークアンケート。おむつ持ち帰りについての記述回答

持ち帰りに否定的だったのは68人。「不衛生で荷物にもなるため、保育施設で処分すべき」(札幌市の35歳)など、衛生面の問題を挙げる人が多かったです。「仕事で疲れて、おむつを持ち帰るのはつらい」(旭川市の38歳)との声もありました。

費用負担は「有料でも処分してもらえたら助かります」(札幌市の44歳)、「保育料と別に費用を請求してもらっても保護者は同意します」(留萌市の31歳)と肯定的な意見が目立ちました。

持ち帰るのが「当たり前」「仕方ない」は8人。「施設におむつが何枚残っているか把握できるので、不満はないです」(釧路市の37歳)、「以前通っていた施設でも持ち帰っていたので違和感はないです」(苫小牧市の31歳)などの理由でした。37人は記述無しか「難しい問題」としました。

ママトークアンケート。おむつ持ち帰りの実施割合。

施設から「おむつの持ち帰りをしていますか」との問いに、「いいえ」と答えたのは70%の80人で、「はい」は27%の30人でした。子どもがおむつを卒業したなどで3人は「その他」と答えました。

取材・⽂/田口谷優子(北海道新聞記者)

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