• 父親の育休取得促進へ4月から改正法 企業に意向確認義務

    (写真はイメージ=kouta / PIXTA)
    父親の育休取得促進を柱とした改正育児・介護休業法が4月から段階的に施行されます。企業による育休取得の働きかけが義務づけられ、10月には「産後パパ育休」(男性版産休)も新設されます。父親の育休取得率が依然として低い中、取得しやすい環境に向けて道内の企業も少しずつ動いていますが、ハードルはまだ高そうです。

    新設の「産後パパ育休」10月スタート
    希望言い出しやすい環境整備がカギ

    厚生労働省の2020年調査によると、民間企業に勤める男性の育休取得率は前年比5.2ポイント増の12.7%と過去最高を記録しました。ただ、女性の81.6%とは大きく差があり、取得期間も5日未満が28.3%を占めます。

    新しい制度は、社員に子どもが生まれる場合、企業は休みを取るかどうか確認する義務を負います。企業からの働きかけで育休を周知するなど、社員が育休取得の希望を言い出しやすい職場づくりが期待されています。

    10月から始まる「産後パパ育休」では、子どもの出生から8週間の間に、計4週分の休みを2回にまで分けて取得でき、より柔軟に休めるようになります。

    子どもが生まれた後の働き方・休み方のイメージ
    新たな育児休業制度のポイント

    札幌市内のIT関連企業「SCSK北海道」は、17年に男性社員が8カ月の育休を取得したのを皮切りに、これまで4人の男性社員が半年から1年間の育休を取得しました。以前から男女にかかわらず、上司が休みを取る意思を確認してきました。

    育休を取得する場合は、本人と上司、人事担当で三者面談を行います。人事総務グループ長の佐藤貴啓さん(45)は「安心してスムーズに育休に入れるよう、代替要員の確保など早めに準備を進めている」と話しています。

    同社は、会議の見直しやフレックスタイムの活用などで、長時間労働の是正に取り組んでいます。佐藤さんは「誰もが働きやすいことが、結果的に育休を取りやすい風土につながる」と強調します。

    「自分が休んでも同僚に迷惑がかからないサポート体制が大切だと思う」と話すのは、千歳市の保育士で、長女(4)が生まれた後1年間育休を取得した井上重幸さん(33)です。

    井上さんは、妻の妊娠がわかり、勤務するこども園の園長に育休の希望を申し出ると、温かく受け入れられました。気兼ねなく言い出せたのは、育休取得者の代わりに任期付きの職員を雇う制度が既に職場にあったことが大きかったといいます。

    妻は産後6カ月で職場復帰し、井上さんは残る半年間、「ワンオペ育児」を経験しました。「育児と家事の大変さを実感し、働き方を見直す機会にもなった。もっと多くの男性にこの経験をしてほしい」と願っています。

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    業種によって制度活用しづらい面も

    一方でジレンマを抱える業種もあります。週休2日制の導入など働き方改革に取り組む江別市の総合建設会社「草野作工」は、これまでに男性の育休取得者はいません。担当者は「制度の周知や相談体制は整えているが、休みを取りづらい建設業界の特徴がある」と話しています。

    建設関連の国家資格取得を目指す人は、育休などで長期間休むと必要な実務経験を積めず、取得が遅れてしまうといいます。担当者は「女性の技術者のなり手を育てるためにも業界全体で取り組まなければいけない」と問題提起しています。

    男性の育休取得に対する同僚らの冷たい視線を感じて、諦めた人もいます。長男(1)を育てる札幌市西区の男性公務員(34)は、育休を取った同僚が「あいつ、よく取るな」と陰口をたたかれる場面を見たことがあります。男性も育休を取得したかったのですが、周りの目が気になりました。結局、育休以外の休暇制度などを利用して2週間だけ休みました。「短い間でも、夫婦で子育てのスタートラインに立てたのは良かった。育休取得が当たり前の社会になるといい」と話しています。

    北海道教育大学札幌校・菅野教授
    休業の権利 会社側も自覚

    4月から、育休取得の意向確認が企業に義務づけられることで、何が変わるのだろうか。育休制度に詳しい北海道教育大学札幌校の菅野淑子教授(労働法)に聞きました。

    個別周知や意向確認を使用者(企業)に義務づけしたことは、休業が取れることを労働者に知らせる観点からも意味があります。使用者側も、休業制度が労働者の権利であることに、より自覚を持つようになるのではないでしょうか。

    働きかけを十分に行わなかったり、取得を控えさせるような声かけしたりすることは、法律の趣旨に反しています。こうした場合、労働者は企業内に設置された相談窓口を利用するほか、労働局に相談することができます。

    労働局の指導・勧告などを経ても使用者が対応しない場合、ペナルティーとして国が社名を公表できる制度もあります。

    取材・文/有田麻子(北海道新聞記者)

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