母親の就活 不安解消に力 マザーズハローワーク札幌

マザーズハローワーク札幌で、個別支援を受ける子育て中の女性(石川崇子撮影)

「まだ子どもが小さいので働こうか迷っている」「子どもを連れてハローワークまで行くのは大変」―。こうした不安から、求職活動をためらう人たちの後押しに「マザーズハローワーク札幌」(札幌市中央区)が力を入れています。同じ職員が継続してサポートするほか、オンラインでの相談態勢も新たに整えました。不安や思い込みを解消することで、就職につながった例も少なくないといいます。

子連れで相談に行くのは大変… チャット対応、電話で求職登録

相談者「子どもを連れて行くのが大変で…」
職員 「いろいろ大変ですよね。電話やZoom(ズーム)を使ったオンライン相談もご用意しています」

昨年11月、全国のハローワークに先駆けてマザーズハローワーク札幌が始めた匿名の「就職支援チャットサービス」には、1月末現在で計85件の相談が寄せられました。平日の午前10時から午後3時、札幌市民に限らず道民であれば誰でもスマートフォンやパソコンから相談でき、相談員がリアルタイムで回答します。

こうした取り組みを進める背景に、コロナ下での新規求職者数の大幅減少があります。20年度は前年度比566人減の3054人、21年度は12月末時点で前年同期比696人減の1427人。一方で、求人がないわけではないのです。北海道労働局によると直近の倍率は昨年12月で1.02倍。職種別ではサービスが2.29倍、販売が1.44倍と人手不足の分野もあります。

マザーズハローワーク札幌は、子育て中の女性が職探しをためらう理由に、小さな子どもを連れて来所することの感染リスク、保育園の休園で突然休まなくてはいけない、といった事態への不安があるとみています。統括職業指導官の大城有弘さん(45)は「子育て中の事情に配慮した求人は多い。職探しのハードルを下げたい」と話しています。

そこで、直接足を運ばなくてもマザーズハローワークにアクセスできる環境を整えました。電話で求職者登録ができたり、Zoomを使った個別相談にも応じています。

心理的距離も縮めたいと昨年10月、女性や若者に人気の「インスタグラム」での発信を開始しました。新たにつくったウサギのような公式キャラクター「まろはろ」が、面接時のマナーなど就職に役立つ情報を伝えています。

公​式​キ​ャ​ラ​「​ま​ろ​は​ろ​」​を​使​い​、​就​職​に​役​立​つ​情​報​を​発​信​し​て​い​る​イ​ン​ス​タ​グ​ラ​ム​の​画​面

公​式​キ​ャ​ラ​「​ま​ろ​は​ろ​」​を​使​い​、​就​職​に​役​立​つ​情​報​を​発​信​し​て​い​る​イ​ン​ス​タ​グ​ラ​ム​の​画​面

1歳の男の子を育てる札幌市東区の西田絢子さん(35)はマザーズハローワーク札幌の支援を受け、昨年10月、健康診断を専門に行う医療機関でパートの職を得ました。感染リスクの低さを考慮して選んだそうです。「家以外に居場所があるのがうれしい。コロナは不安だったが、職探しを諦めなくて良かった」と話しています。

希望と求人のミスマッチ…同じ職員が担当 じっくり支援

求職活動に乗り出した先で、希望する職種と求人企業のミスマッチも起こりえます。例えば、人気の高い事務職はコロナ前から狭き門で、札幌市の12月の職業別有効求人倍率は事務が0.36倍でした。

大城さんは「相談過程で本人の意向と気づきを大切にしながら、職種の幅を広げていく手伝いをしている」と話します。20年、同じ職員が継続して支援する「じっくり相談」を受けたのは838人で、うち9割の783人が就職を決めました。

マザーズハローワーク札幌は、子育て中の女性のほか介護中の人や父子家庭で今の働き方を見直したい人など、性別にかかわらず利用できます。問い合わせは(電)011・233・0301へ。道内にはほかにハローワーク内併設のマザーズコーナーが11カ所あります。

経験振り返って/適職テスト参考に

マザーズハローワーク札幌の就職促進指導官で、自身も高1、小4、小2の子どもを育てる佐藤夕子さん(44)に、子育て中の女性の就職活動の進め方について、教えてもらいました。

佐藤夕子さん

佐藤夕子さん

まず自分を知るところからです。職に就いた経験が短くても、PTA活動や子どもの習い事の役員など、これまでの社会活動を振り返ってみます。手始めに職業情報提供サイト(日本版O-NET)をのぞき、適職を探す診断テストを受けるのもいいですね。

ハローワークインターネットサービスは自宅からも検索できます。曜日や勤務時間、配偶者の扶養範囲内になるかどうかなど重視する条件を入れて絞ります。

マザーズハローワーク札幌での就職活動の進め方

求人内容に疑問点があればハローワークの職員が企業に問い合わせます。たとえば「子どもの病気で急に休む際、配慮してもらえるか」といった心配は事前に聞いておくと安心です。

応募書類はアピールポイントを明確にして書きます。職員が添削も行います。面接は、発声やお辞儀のマナーの練習などをして備えましょう。ブーツを履いてもいいか、スーツの方がいいか、といった服装の相談にも応じ、伴走します。

取材・文/有田麻子(北海道新聞記者)

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