• #11|父の「厳しすぎる」コロナ対策 真意に気づかず家族の間に溝

    「晴れ ときどき子育て日和」#11
    札幌市で朗読活動を行い、2018~19年に北海道新聞で「絵本はママを育ててくれる」を連載していた谷岡碧さんが、2人の子どもの母となった日々を綴ります。(バックナンバーはこちら


    この連載で以前、「巣ごもり生活で気づいた、当たり前の日々こそ愛おしい」という記事を書きました。心のどこかで「これは特殊な日々の記録。1年も我慢すれば、日常を取り戻しているはずだ」と思いながら。ところが今も、コロナ禍の終着点は見えないままです。 

    それでも私たちはこの状況に適応する他なく、個人の考えには当然差異があって、「分断」を感じる場面も増えました。この夏、その「分断」は私たち家族にも発生しました。

    両親と私たち一家は同じマンションに住んでいて、以前は同居しているかのように頻繁に行き来していました。しかし父には持病があり、感染すれば重症化する恐れがあると考えた母と私たち夫婦は、2か月に一度はPCR検査を受けていました。夫がやむなく道外に出張した時は帰宅後に病院でPCR検査を受け、陰性でも2週間は両親の家には行かない。家族の誰かが少しでも体調を崩したら、同じように距離を置きました。

    こうしたルールの順守も、父のワクチン接種が完了すれば節目を迎えるはず…そう私は考えていました。「父の命を守らなくては」という緊張感が少し緩んでしまったのかもしれません。

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    一方、父はその後も対策を緩めようとはしませんでした。

    「(夫の)出張は仕事だから仕方ないでしょう。行きたいわけじゃないんだよ」
    「東京の感染状況をわかっているのか!?」

    「私たちだって早くワクチンを打ちたいけど、予約が取れないの」
    「本当に取る気はあるのか!!」

    接種完了前よりも厳しい態度に、私たちは首をかしげました。終わりの分からないコロナ禍だからこそ、一生懸命ルールを守っている息子や娘に少しは息抜きさせたい。そんな思いもあり、素直に話を聞けない心境にもなっていました。ついに「自粛しないなら家には来るな!」と父が宣言し、子どもたちは祖父とほぼ会わずに夏休みを終えました。 

    和解のきっかけは、コロナ患者を診続けてきた医師の友人の助言です。重症化しなくとも味覚や嗅覚などといった神経系の後遺症に苦しむ人が多いこと、感染力が強いデルタ株が子どもの間にも広まっていることを、丁寧に伝えてくれました。そして「いまお父さんが気遣っているのは、あなたたちの健康だと思うよ」と言い添えてくれました。私は感染に対する自分の認識の甘さを痛感するとともに、ようやく父の真意に気づいたのです。

    早々に1回目の予防接種を受け、すぐに父へ報告しました。真っ先に返ってきたのは「理不尽に怒ってすまなかった」という謝罪の言葉。子を心配する気持ちが時に怒りとなってしまうことは、子育てしている今なら理解できたはずなのに…「私の方こそごめんなさい」。

    コロナは私たちの心身を危険にさらすだけではありません。錯綜する情報の、何をどう、どこまで選び取るかによって人間関係にも影を落とします。正解が分からないこともあります。だからこそ大切な人とは、ほんの少し歩み寄る気遣いを怠らないように。その重みをいま、ひしひしと感じています。

    谷岡碧

    谷岡 碧

      2012年にテレビ東京を退社後、タイへ移住してNGOで勤務。17年に帰国後は札幌へ住み、幼なじみと読み聞かせユニット「エネッツ」を結成。21年春から、主婦と生活社の女性向けサイト「CHANTO WEB」でライターとしても活動中。夫と小学2年生の長男、3歳の長女と暮らす。札幌市出身、36歳。

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