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体が大きい6歳の息子、女風呂に入れない?

Q.質問

30代女性団体職員。6歳の長男と2人暮らしです。自宅のお風呂が故障したため、近所のスーパー銭湯に行き、親子で女風呂に入ろうとしました。息子は6歳にしては体が大きいため、従業員から男風呂に入れるように言われて仕方なく1人で行かせましたが、納得できません。もし転んでけがでもしたら、銭湯に損害賠償請求をすることは可能ですか。また、男女混浴できない基準の7歳になってから年齢を隠して女風呂に入れたら、問題になりますか。

A.回答「条例は7歳以上 より厳しい業者も」(弁護士・今井明日香さん)

厚生労働省は2020年、公衆浴場での男女混浴を制限する年齢の目安をおおむね「10歳以上」から「7歳以上」に引き下げました。パブリックコメントや大学教授らによる「子どもの発育発達と公衆浴場における混浴年齢に関する研究」などを踏まえたものです。これに伴い、北海道や札幌市などの自治体も条例を改正し、23年4月1日から、原則として7歳以上の混浴が禁止となりました。

事業者によっては、実情に応じて条例よりも厳しいルールを設けるところもあるようですが、条例では保護が必要な幼児を保護者なしで入浴させることも禁止しています。前述の研究では「混浴禁止は6歳以上(ただし6歳でも小学校入学前は可)とすることが妥当」と結論づけており、本件のスーパー銭湯の対応は微妙なところと言えそうです。

そして、1人で入浴した子どもが転んでけがをしないか心配とのことですが、銭湯側には、利用者の安全に配慮する義務があります。もっとも、浴場の床が滑りやすいのは普通のことなので、利用者も転ばないように気を付けることが求められます。過去の裁判例では、浴場側の一般的な安全対策として、転倒事故が起きたことがある場所や転びやすそうな場所について注意喚起の掲示、滑りにくい床材への変更、手すりの設置などが挙げられています。

しかし、6歳の子どもが1人で入浴するのであれば、難しい掲示物を読むことはできないと思いますので、転びやすい場所に漢字の注意書きをする程度の安全対策は十分とは言い難いこともあるでしょう。走って転んでしまったなど子どもだけに落ち度がある場合は別ですが、十分な安全対策がされていない危険な場所で転倒した場合には、銭湯側への損害賠償が認められる可能性はあると考えます。

息子さんが7歳になったら、女湯を利用することは条例で禁止されています。この条例に違反した親子に対する罰則はありません。しかし、条例に違反して7歳以上を混浴させた銭湯が行政処分を受けて損失が生じた場合や、他の利用者が精神的苦痛を受けた場合などには、損害賠償を請求されることも考えられるので、ルールを守って利用しましょう。

<略歴>今井明日香(いまい・あすか)

1981年、神奈川県出身。子どものころ米国で暮らした経験があり、英語が堪能。学生時代に旅行した北海道が気に入り、民間企業勤務を経て2008年に北海道に移住。12年に札幌弁護士会に登録。

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