「ワンオペ」女性の負担に 北見でも進む少子化への対策は

バランスボールで体を動かしながら、健康作りのアドバイスをする平野聡恵さん。自らの経験から子育て中の母親の力になりたいと教室を始めた=12日(星野雄飛撮影)

バランスボールで体を動かしながら、健康作りのアドバイスをする平野聡恵さん。自らの経験から子育て中の母親の力になりたいと教室を始めた=12日(星野雄飛撮影)

北見市の少子化が想定を上回るペースで進んでいる。2022年度の出生数は2月末時点で548人と10年前の半分程度。政府は出産一時金の引き上げなど子育て世帯の財政負担軽減を打ち出す中、女性の間で根強いのが育児を1人で担う「ワンオペ」への不満だ。昨年度、北見市職員で育児休業を取得した男性はゼロ。専門家は「女性の負担が重すぎて、出産をためらう原因になっている」と指摘する。


「元気に運動していきましょう」。北見の保育所で12日、バランスボール講師の平野聡恵さん(40)が参加者に声を掛けた。NPO法人マドレボニータ(東京)が認定するオホーツク管内で唯一の「産後セルフケアインストラクター」で、5歳と小学2年、4年の3児の母親でもある。

うつの一歩手前

第1子出産後、育児を1人で担う「孤育て」に悩んだ。調理師だった夫は夜に不在がち。2~3時間ごとに起きる子どもに合わせ授乳する生活で寝られず、精神的に追い込まれていった。当時は看護師で「知識は人よりあるはず」と周りに相談できず、子どもがかわいいと思えないことも苦しかった。「うつ病一歩手前だった」と振り返る。

第2子出産後、産後ケアの教室に参加し、心身の回復を実感。インストラクターとして認定を受け、21年からバランスボールを使った教室を始めた。体を動かしながら、心身の不調を聞いたり悩みを打ち明け合ったりと、優しい口調で参加者に寄り添う。「政府が進めるお金による支援は大切だけど、お母さんが一人じゃないと感じられる場所も必要」と訴える。

男性の育休に壁

北見市職員で昨年度は育休を取得した男性はゼロ、本年度は12月時点で30.8%であるのに対し、女性は両年度とも100%だった。市は男性の取得率を高めるため、育休中の代替要員確保などを進める。ただ若手職員は「自分が休めば周りの負担が増える。心理的ハードルが高い」と言う。

一方で取得が進む職場もある。北見で特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人「きたの愛光会」は、21年に男性の育休第一号が誕生。昨年度は男性4人が取り、女性と同数だった。先輩が取る姿を見て、申請を決める後輩が多いという。ただ、かつては女性すら育休を申請しにくい雰囲気で、約5年前には妊娠を機に退職した職員もいた。

当時、就任して間もなかった大栄一裕施設長(63)は「休みは当然の権利なのに、取らずに辞めるとはショックだった」と振り返る。19年に妊娠や出産のための制度をまとめた手引書を作り、子育てと両立できる勤務プランを紹介。職員にタブレット端末を配布し、作業を効率化するなど生産性アップも目指した。大栄さんは「誰かが抜けて仕事が回らないなどあり得ない」と強調する。

「社会で育てる」

男性への育児参画を促す試みは全国で進んでおり、富山県は新年度から、子どもが発熱などで急なお迎えが必要な場合、まず父親が電話を受ける「ヒーローコール」を始める。子育て中の県職員の職場の連絡先を小学校や幼稚園に登録し、呼び出しに応じる仕組みだ。長年、少子化問題に取り組む産婦人科医で富山県議の種部恭子さん(58)は言う。「行政はお金だけでなく、知恵を絞ることで子育て支援ができる。子どもは男性含め社会で育てるという考え方が大切だ」(水野薫)

Area

北海道外

その他