根室・花咲港小がインクルーシブ教育 幅広い年齢、時間割自由に 障害の有無取り払う

インクルーシブ教育を導入する根室市立花咲港小

【根室】市教育委員会が市立花咲港小で実施する、障害がある児童を分けずに教育する「インクルーシブ教育」。道内の公立学校初の取り組みは、時間割を児童が自分でつくったり、学年や障害の有無を取り払った学級編成などの特徴がある。市内の障害児教育の充実を図るきっかけになりそうだ。

根室市教育委員会の波岸克泰教育長は9日の市議会で「インクルーシブ教育は、障害のみならず、人種や男女差、性の指向性、社会的地位や背景の違いなど、ひとりひとりの個性と価値を認め、自分らしくあるための選択や決定を尊重する教育で、これからの学校教育に求められる姿だ」と語った。

根室市教育委員会は新年度、道立特別支援教育センターとの連携体制を構築。2024年度には花咲港小を市内の障害児教育の拠点とし、インクルーシブ教育の実践に向けた環境整備を図る。道内では障害を持つ児童が普通学級の中で学ぶことを原則としている公立学校は無く、先進的な事例になる。

花咲港小ではインクルーシブ教育の基本とされるドイツ発祥のイエナプランを参考に、障害がある児童には専門的支援を行いつつ、一般の学級の中で学ぶことを基本とする。学級は幅広い年齢で構成し、一律の時間割を撤廃。児童ひとりひとりの発達に合った進度別の時間割を取り入れることで、障害の有無にかかわらず学ぶ環境をつくる。

教師が一方的に進める授業は無いため、障害がある児童が授業に遅れるといった問題は起きにくく、障害がない児童も意欲や主体性が伸びる傾向があるという。

日本の障害児教育は特別支援学校や特別支援学級などを設定し、障害のある児童と無い児童を分けて教育することが原則になっている。これまでも保護者や児童生徒の求めに応じ障害がある児童生徒が普通学級で学ぶ例や、行事などを一緒に行う例はあるものの、国連の障害者権利委員会は日本に対し、障害児を分離する制度の中止を勧告した。

花咲港小は小規模校で、児童数10人。市教委の適正配置により他の小学校に統合される可能性もあったが障害児教育の拠点とすることで存続を図る。根室市内には特別支援学校は無く、障害児が専門的な支援を受ける場合は中標津町や釧路市に移る必要があった。(松本創一)

「他の校区にも広げて」

東洋大人間科学総合研究所の一木玲子客員研究員の話
インクルーシブ教育は、誰一人取り残さない状態を目指す。海外では障害児が普通学級で学ぶのは標準的な考え方。学校だけで無く、地域住民を巻き込んで積極的に取り組んでほしい。また、市内のひとつの学校の実践にとどまらせず、他の校区にも広げ、地域から排除される子が出ないようにしてほしい。インクルーシブ教育を行うことが目的化し、障害の種類によって受け入れられない児童が出ないようにすることも大切だ。

この記事に関連するタグ

Area

北海道外

その他