皮膚科専門医が教える、子どものための冬のスキンケア対策

皮膚科専門医が教える、子どものための冬のスキンケア対策

寒さの厳しい冬がやってきました。しっとりプニプニ、思わずほおずりしたくなる子どもの肌も、カサつきが気になる季節です。冬は空気が乾燥して水分が奪われてしまい、悪化すると痒みや痛みを伴う場合も。この時期のお風呂の入れ方や、有効な保湿方法、紫外線対策など、冬の子どものスキンケアについて「ことに皮フ科クリニック」(札幌市西区)の志貴美麗院長に聞きました。

教えてくれたのは

志貴美麗先生

ことに皮フ科クリニック院長

しき・みれい/北海道旭川市出身。日本皮膚科学会皮膚科専門医。秋田大学医学部卒業後、札幌で病院勤務などを経て、2021年より札幌市西区「ことに皮フ科クリニック」院長。アトピーやニキビなどの一般皮膚科や小児皮膚科、レーザーなどの美容皮膚科などの診療を行う。夫と3人の娘、ハムスターと暮らす。

子どもの肌はデリケート! 薄い肌を乾燥から守ろう

子どもの皮膚は薄く、大人の厚さの半分ほど。皮脂が少ないため、水分が蒸発して乾燥しがちです。肌が乾燥すると表面のバリア機能が弱まってしまうので、ほこりや細菌など外からの刺激を受けやすくなり、湿疹ができてしまいます。「デリケートな肌を乾燥から守ることが、冬の子どものスキンケアの重要なポイントです」と志貴先生。

良かれと思ってやってない? ホントはNGこんなケア

ホントはNGこんなケア

「キレイにしなくては」と、スポンジでゴシゴシ…良かれと思ってやりがちですが、デリケートな肌を傷つけてしまうので気をつけましょう。子どもの肌は皮脂が少ないので、石けんの使いすぎもかえって乾燥を招くことに。「抗菌」や「薬用」などの洗浄剤は刺激が強く、有益な常在菌まで失ってしまうので、子どもには必要ありません。

また、寒い冬だからと厚着をさせたり、室温を上げすぎたりすると、汗をかいて肌トラブルの原因に。外出する際は重ね着をして、調節できるようにしましょう。自宅では、室温23〜24度、湿度は40%が最適です。

お風呂に入れるときのポイント
“石けんは使わず手でやさしく洗う”

子どもの体の正しい洗い方

皮脂の少ない子どもの肌に、石けんは使わないのが基本。38〜40℃のお湯で、体も頭も手でやさしく洗えば十分で、特に冬の入浴は週3〜4回で良いそうです。「長湯も皮膚の保湿成分が流れ出て乾燥を招くので、20分以内で済ませましょう」とのアドバイスも。夕方の忙しい時間に「お風呂に入れなくては!」と、てんてこまいのママやパパも少なくないはず。入浴の回数が減らせれば、忙しいママの気持ちも、ちょっと楽になるかもしれません。

首・脇・股・足裏は石けんで

汚れの溜まりやすい首、脇、股や足の裏は石けんを使って丁寧に洗いましょう。「弱酸性」「アミノ酸入り」などと表記のある、泡タイプのボディーソープが便利です。ベビーシャンプーは1歳くらいから使えます。

2〜3カ月までの赤ちゃんは皮脂が多め

生後2〜3カ月くらいまでの赤ちゃんは、お母さんのホルモンの影響で脂の分泌が多いため、頭や顔などに湿疹ができやすくなります。泡立てた石けんを手に取って、シワに沿って優しく洗ってあげましょう。

よだれや食べこぼしなど口周りの汚れは、ぬるま湯でトントンと押し拭きを。先生は「アレルギーにつながる可能性もあるので、赤くなったら迷わず受診しましょう」と呼びかけています。

冬は特に保湿が大事!

冬は特に保湿が大事

入浴後のふやけた肌は、ただでさえ水分が蒸発しやすい状態です。特に乾燥に気をつけたい冬は、必ず保湿剤を塗りましょう。でも、すぐじゃなくて大丈夫。入浴後はバタバタしてしまうので、すぐに塗れなかったからと諦めないで30分後でもOK。塗る回数に制限はないですが、1日2〜3回を目安に、乾燥が気になったら小まめにケアしてあげましょう。大人がゆったりとした気持ちで、スキンシップの時間を持てるといいですね。

保湿剤の選び方は?

保湿剤の選び方

保湿剤は「エモリエント」と「モイスチャライザー」の2つに分類されます。エモリエントは、荒れて傷ついた肌をさまざまな刺激から守り、モイスチャライザーは、肌に潤いを与える保湿効果が高いことが認められています。保湿をしたい時は、モイスチャライザーを選ぶのがポイント。代表的な成分は「ヘパリン類似物質」や「セラミド」などです。

また、大切なのは基材(テクスチャー)で、乾燥する冬は、保湿力のより高い軟膏やクリームがベター。「ちなみにワセリンはエモリエントにあたり、肌の保護はしますが、保湿はしないのでご注意を」と先生。保湿剤は無香料、無着色、アルコールフリーのものを選びましょう。

赤ちゃんにおすすめの保湿剤

志貴先生におすすめの保湿剤を聞きました。

「ドラッグストアやオンラインストアなどで購入できるので、好みのものを見つけてrみてください。どんなものでもかぶれる場合はあるので、まずは腕や太ももなど狭い範囲で試してみるとよいでしょう。塗り方のコツは、大人の手のひらになじませてから、スタンプするように肌に置いてあげること。シワに沿って塗ると、保湿剤が皮膚の凹凸に入るのでベストですが、まんべんなく塗れなくても気にしなくて大丈夫です」

赤ちゃんにおすすめの保湿剤

左から「ノブ ベビー ミルキィローション」「ミノンベビー全身保湿ミルク」「キュレル クリーム」

ノブ ベビー ミルキィローション
赤ちゃんの肌にうるおいを与え、やさしく守る低刺激性の全身用保湿乳液。塗ったあともべたつかず肌をしっかり守ります。(120mL / ¥1,320)

ミノンベビー 全身保湿ミルク[医薬部外品]
赤ちゃんの肌にすっとなじむ保湿ミルク。するする伸びてべたつかず、肌のバリア機能をサポートして肌あれを防ぎます。使いやすいポンプタイプ。(150mL / ¥1,300)

キュレル クリーム[医薬部外品]
潤い成分が角層の深部まで浸透し、カサつく肌もなめらかに整えます。しっとりやわらかなクリームタイプで、赤ちゃんのデリケートな肌にも使用できます。(90g / ¥1,650)

※価格はすべて編集部調べの税込価格

冬の日焼け止めは必要最低限でOK!
日光を浴びてビタミンDを摂取

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夏ほどではないものの、冬も太陽からの紫外線は降り注いでいます。大人であれば、一年中日焼け止めを塗って紫外線対策をする必要がありますが、日本の子どもの場合、冬に特別な対策はしなくても良いそうです。

「紫外線を浴びると体内でビタミンDが生成され、骨の成長を促します。骨が作られるのは、生まれてから思春期くらいまでの期間限定。成長期にビタミンDが足りないと、骨の発達障害を起こす“くる病“の原因にもなります。紫外線量の少ない冬は、日焼けの心配よりも、短い日照時間の下で少しでも太陽を浴びることが大切です」と志貴先生。

一方で、冬の紫外線で気をつけたいのは、積もった雪からの照り返しによる「雪焼け」。スキーや雪遊びなど長時間屋外で過ごす場合は、日焼け止めを薄く塗ると良いでしょう。SPF20〜30、PA++程度の、お湯で落とせるタイプがおすすめです。

*  *  *

デリケートな子どもの肌。冬は特にしっかり保湿をして、乾燥から守ってあげることが大切です。とはいえ、子どもにとってはママやパパが笑顔でいてくれることが一番。親子でスキンシップを楽しみながら、子どもの肌や心身の成長をサポートしてあげたいですね。


取材・文/猪飼佳奈子 撮影/國枝琢磨(静物)

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