重すぎるランドセル 小樽で人気の「ナップランド」って何?
教科書のページ数増加、タブレット端末の導入などによって、小学生のランドセルが年々重たくなっている-。どうしん電子版にこんな記事を掲載したところ、「子どものランドセルの重さが気になっていた」「中学生の荷物も重い」など、さまざまな声が「みなぶん特報班」に寄せられました。小中学生の荷物を軽くすることはできないのか。道内各地の取り組みを探りました。
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小樽市を訪ねると、小学校低学年の子どもたちが、リュックサックに似たカバンを背負って登下校する様子を目にしました。ランドセルのようにふた部分をかぶせて使うカバンです
「丈夫だし、教材だけではなく、タブレット端末や折りたたみ傘も入ります」。小樽市の小学生2人の母親の橋本恵理さん(38)は言います。1年生の次女や、多くの次女のクラスメートが、ランドセルではなく、このカバンを使っているそうです。橋本さん自身も、小樽で過ごした小学生時代に使っていました。
このカバンは「ナップランド」と呼ばれています。
撥水加工されたナイロン製。小樽市内の2業者が販売しており、価格は7700円。重さは770グラムで、一般的なランドセル(重さ1.2キロ~1.5キロ程度)の半分ほどです。
ナップランドを販売しているかばん店「バッグのムラタ」によると、1970年にムラタがナップランドを開発しました。小樽は坂道の多いマチです。「小樽に合ったランドセルはできないか」と地元の小学校教員から相談を受けたことがきっかけでした。手袋をしていてもつかみやすい留め具、反射材を取り付けるなど、毎年のように改良を加えています。現在、小樽市内の小学1年生の6、7割が使っているといいます。
利用者は小樽市外にも及んでいます。留萌管内増毛町では、約30年前から、町教委が小学校の新入生に、入学祝いとして寄贈しています。ムラタの村田達哉社長(70)は言います。「ここ1、2年は札幌や道外からの注文も増えています。荷物が重くなったせいでしょうか」。2014年から、ナップランドの利用状況などについて調査している小樽商科大の高野宏康客員研究員(48)は「地元の利用は以前より減っていますが、子どもたちの荷物の重量化の影響で、ナップランドの価値が見直されるのでは」と話します。
文部科学省は2018年、学校に教材を置いて帰る「置き勉」など、負担軽減策を講じるよう各教育委員会に通知しました。しかし、保管場所の確保などの制約もあり、置き勉を一部教科に限るよう指導する学校もあるなど、対策が進んだと言える状況ではありません。
こうした中、滝川市の明苑中は2019年、生徒総会で「置き勉宣言」を採択しました。生徒主導で置き勉を進める取り組みです。当時は生徒からも、家庭学習時間が減るなど、課題を指摘する声が上がったそうです。生徒会長の堂前大翔(やまと)さん(14)=2年=は「生徒会が毎年、学習会を開いて『(どの教材を持ち帰るかなど)自ら考えて行動する』などと呼びかけています」と話します。堂前さん自身はテスト期間を除き、家庭学習で取り組む教科を1教科だけ選び、教材を持ち帰るようにしているそうです。菅原寿一教頭は「導入4年目に入り、生徒の間で(置き勉と持ち帰りの)メリハリがうまく付いてきているように感じる」と話します。今後は、「学校に荷物を置いて帰る以上、さらに整理整頓の意識を身に付けるのが課題」だそうです。
帯広市では、2019年までに市内の小中学校全39校が教室内に一人一人が教材や荷物を自由に置ける棚を設置し、置き勉を認めています。帯広市内の小学6年の男子(11)の母親(51)は「算数と国語は持ち帰っていますが、他の教材は学校に置いています。タブレット端末を持って帰るときでも、以前よりは荷物が軽くなりました」と話しています。
北海道教育委員会義務教育課は「一部の学校で児童生徒への負担軽減策に課題があるのは事実。参考となる事例を集めて年内に各学校に周知したい」としています。
取材・文/田口博(北海道新聞記者)
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