連載コラム「あそぶ→そだつ」第19回

【あそぶ→そだつ】手の使い方 試して学ぶ

2カ月前に訪れた札幌市内の認定こども園で、1歳4カ月の男の子が、こまで遊んでいました。

一般的なこまにあるような心棒がなく、触れると回り、かめば「歯固め」にも使えるおもちゃです。男の子がうまく回らず試行錯誤していると、手がこまに触れた拍子に、くるくると回りました。そばで励ましていた保育者と喜びを共有すると、何度も繰り返し回します。仕組みがわかったようです。すると今度は、こまをつかみ手首を少しひねりました。うまく回りませんでしたが、新たな手の使い方を試しているかのようでした。

私たちの生活には便利な道具がたくさんあります。センサーやボタンひとつで何かが開いたり閉まったり、自分の力を使わなくてもできることが増えました。こうした道具が必要な方もいますし、細菌やウイルスの感染対策から考えると、公共の場では適した道具と言えるかもしれません。

しかし、自分の身体や力を使ってほしい乳幼児期には不向きです。使うことで育つ―と考えると、便利な道具によって使わなくなった動作を、遊びの中で使えるようにしていくことが必要です。「手首をまわす・ひねる」という動作も、そのひとつだと考えます。

別のこども園では、2歳過ぎの男の子が、ねじで遊んでいました。ボルトとナット型のおもちゃです。ボルトにナットをはめて、手首をただ回すだけではうまくはまっていきません。

一度回したら、持ち直してさらに回す必要があります。これも試行錯誤しながら、物に合わせた手の使い方を学んでいく遊びです。

手首を器用に使うことは今後、絵を描いたり色を塗ったり、文字を書いたりする時に使う動作です。遊びの中で手を十分に使えると良いですね。

教えてくれたひと

増山由香里さん

札幌国際大准教授(発達心理学)

1972年生まれ、岩見沢市出身。岩見沢東高から藤女子短大(当時)へ進み、幼稚園教諭、保育士資格を取得。保育現場で勤務後、北大に編入し、北大大学院に進んで修士課程修了。旭川大学短期大学部准教授などを経て2017年から札幌国際大人文学部准教授。保育現場での出合いから、おもちゃや絵本への関心を深めた。編著に「具材―ごっこ遊びを支える道具」(17年、庭プレス)がある。

2024
5/1
WED

Area

北海道外

その他