長沼の学校給食、継続是か非か 町、配食サービス導入前向き 保護者は反発

7月のスクールランチ試食会のメニュー。ドライカレーとフルーツのヨーグルトあえ

【長沼】学校給食を続けるべきかどうか―。町と町教委が将来の民間配食サービスの利用も視野に入れて今年7月、小中学校でコープさっぽろ(札幌)の「スクールランチ」を試験的に1回提供したところ、保護者らが「給食の質の低下を招きかねない」などと反発。PTAが給食の意義を学ぶ研修会を開催し、町議会も町の食育推進路線との矛盾を指摘するなど、議論が活発化している。

夏休みを直前に控えた7月21日、長沼小(417人)、長沼中(256人)で、給食の代わりに初めて「スクールランチ」が提供された。メニューは、ドライカレーとフルーツのヨーグルトあえ。カレーは温かく、ヨーグルトは冷たい状態で提供され、子どもたちのアンケート結果も「おおむね好評だった」(長沼町教育委員会)という。

弁当工場を道内6カ所に持つコープさっぽろは、新事業として昨年スクールランチを始めた。現在、いずれも以前は牛乳給食のみだった日高管内様似町、留萌管内初山別村、上川管内愛別町で提供している。

「センター」老朽化

長沼町の給食センターは築35年と老朽化が進み、改築には約10億円が必要とされる。町は現在、小中一貫教育に向け、新校舎の基本構想を策定中で、スクールランチを導入すれば、将来子供が減って給食センター改築が過大投資になるリスクを避けられると算段する。

また、斎藤良彦町長は給食費無償化を将来の課題に掲げており、6月の議会で「(無償化には)年間約3400万円の費用が見込まれる。新校舎建設に伴い、民間を活用した新たな運営方法を検討し、無償化に近づけていきたい」と答弁。試食会後の9月、間嶋勉教育長が議会でスクールランチについて「議論をスタート」したいと明言するなど、配食サービス利用に前向きだ。

一方、試食会は町PTA連合会にとって「寝耳に水」。保護者からは「これまで積み上げてきた地産地消の取り組みはどうなるのか」「豊かな農村地帯のイメージが台無し」などと反発する声が相次いだ。

PTAが研究大会

そこで同連合会は9月21日、町民会館で「食育」をテーマに研究大会を開催。道教委の学校給食指導担当者から「給食は教育の一環。食材に地場産物を使うことで地域文化の理解と感謝の心が育まれる」との説明を聞き、約40人が感想を語り合った。同連合会のある幹部は「まず給食とスクールランチの違いをしっかり見極める必要がある。給食費無償化と配食サービス利用は本来、別の話。町財政のツケを子どもたちに回してはならない」と訴える。

町議会も反応した。9月の一般質問で、町議2人が「町民は給食がどうなるのか不安に感じている」と指摘。さらに町がこれまで「食育」に力を入れ、道内自治体として初の「スローフード宣言」(2004年)を決議したり、町独自の食育推進計画を作った経緯を強調し、「これらの宣言、計画と、スクールランチとの整合性はどこにあるのか」と詰め寄った。

無償化されるのであればスクールランチ導入を支持するという町民も少なくないとされるが、町教委内には「スクールランチへのアレルギーがこれほど強いとは。具体的なアンケートができる雰囲気でもない」と手詰まり感も漂う。

小中学校新校舎の基本構想の大枠は、12月にも固まる見込み。そこに給食の在り方を盛り込むのか、さらに長期的に議論を進めるのか、行方が注目される。(土屋孝浩)

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