産前産後のケア細やか 東川町、移住増え独自策 昼食宅配や掃除代行

東川町の昼食宅配サービスで、ランチプレートなどを届けてもらう渡辺聖花さん(右)

移住者で人口が増え続ける東川町が本年度、妊産婦や子育て家庭に対するユニークな支援策に取り組んでいる。出産前後の昼食宅配や掃除代行サービス、未就学児の一時預かり保育の利用への助成など、他の自治体に先駆けた独自の施策だ。近くに頼れる親族がいない移住者の悩みに応えた事業で注目を集めている。

負担軽減して休養日に

「1人目のときにはなかったのでとても便利。食事をつくるのが大変な産後にも利用したい」。10月に第2子の出産を控える札幌市出身の渡辺聖花さん(27)は、妊娠7カ月から1年間利用できる昼食宅配サービスで、ランチプレートやキーマカレーなどを届けてもらい、満足そうだ。

仕組みは町支給のクーポン(500円券40枚つづりで2万円)を使い、町内の飲食店「東川スタイルカフェZen」「ひがしかわ食堂ワッカ」の2店のメニューから選んで、希望日の午前10時までに町保健福祉課社会福祉室に注文。配達は業者か町職員が担う。

中村あさ子室長は「妊産婦にとって食事づくりが負担になる日もある。そういう声を聞いて導入した」と説明する。5月18日にサービスを始め、クーポンを88人に交付。既に350食以上を配達した。ワッカの栄養士三島慧さん(22)は「使うのは冷凍野菜ではなく、栄養価が高い旬の野菜。妊産婦向けにカフェインを入れないなど配慮している」と胸を張る。

東川町の人口と出生数の推移

東川町が子育て支援に重点を置いているのは、移住者が人口の半数を占めていることが背景にある。町の定住促進事業が奏功し、人口は約30年間で2割も増え、8500人に達した。出生数は年間50人前後で安定して推移している。ただ、子育て世代の移住者は近くに支えてくれる親族がおらず、負担が大きいとの声が上がっていたという。

町は本年度、産前産後の母親に休養日を設けてもらおうと、子育て経験のある職員がアイデアを出し合い、さまざまな施策を打ち出す。予算は人口増に伴い増えた地方交付税の配分額を充てた。クーポン(千円券20枚つづりで2万円)を使い、清掃大手ダスキンの掃除代行サービスを受けられるのもその一つだ。

3歳と生後6カ月の女児を育てる札幌市出身の今綾さん(35)は浴室とトイレの掃除を依頼。「育児をしながらの掃除は大変で精神的にも良くない。自分ではできないところまで、きれいにしてもらえた」と喜ぶ。

生後2カ月以降の未就学児がいる世帯には、月2回、子育て休養日を設定してもらい、一時預かり保育の利用を1回6時間まで助成する制度も始めた。預かり施設「子育て応援ルームひまわり」によると、月に約40人の申し込みがあるという。代表の塚原千春さん(53)は「子育てで疲れた母親が温泉やカフェに行くのに利用している」と話す。

東川町の取り組みについて、道子ども子育て支援課は「全ての市町村事業を把握していないが、聞いたことがない」と指摘。町保健福祉課の佐々木英樹課長は「本年度は試行運用でアンケートを行い、次年度に改善したい」と強調する。

子育て施策に詳しい札幌国際大の品川ひろみ教授(保育社会学)は「先進的な取り組みで注目しているが、住民ニーズや規模などが異なる他の自治体がやるのは簡単ではない。ただ、うちのマチに何が必要かを考えるきっかけになってほしい」と期待している。

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