ピザ囲んでママ交流を 洞爺湖温泉の「ミトンピザ」徳正さん

看板商品の「マルゲリータ」(1500円)を持つ徳正さん。地元産の無農薬トマトをふんだんに使う

子育て中の自分がほしかった店を―。6歳と4歳の2児を育てる胆振管内洞爺湖町の主婦徳正(とくしょう)あきなさん(38)が同町の洞爺湖温泉に昨年4月、手探りでオープンさせたピザ店「ミトンピザ」が、地元や近隣に住む子育て世代のよりどころになっている。今年春にはピザを焼けるキッチンカーも導入。室蘭市に出向いてベビーマッサージのワークショップを開くなど活動の幅を広げている。

キッチンカー活用  ベビーマッサージ移動教室も

「うちの子たちが乳幼児だったころの自分は、外に出かけようとしても『泣くかな』とか『迷惑かけるかも』と、行く前からピリピリして疲れていた。それなら、自分で子育てママたちが安心して来られる場所を作ってしまおうと」。徳正さんはそう振り返る。

2年前に西胆振へ転居し、自らの思いを形にしようと徳正さんは動き出した。

​徳​正​さ​ん​と​ミ​ト​ン​ピ​ザ​の​店​内​。​子​連​れ​同​士​で​ピ​ザ​を​食​べ​な​が​ら​く​つ​ろ​げ​る​。​「​隠​れ​家​」​の​よ​う​な​小​屋​の​ほ​か​、​替​え​お​む​つ​や​ベ​ビ​ー​ベ​ッ​ド​も​備​え​る​

室蘭市出身で、小さいころから訪れて大好きな場所だったという洞爺湖畔で空き家を見つけた。応援してくれる夫ら家族や友人の助けを借りて改装。洞爺湖町のチャレンジショップ支援事業の補助金で調理器具などをそろえた。

飲食業の経験はなかったが、夫の転勤で2015年から5年間を日本海に浮かぶ奥尻島で過ごした徳正さん。当時、島の知人から「ここではないなら自分で作るしかないんだよ」と言われ、よく家族で作ったピザが頭に浮かんだ。「丸くてみんなで分け合えて一緒に食べられるピザなら」。どんなピザを出すか、店作りと並行して研究と試作を重ねた。

「子どもにも大人にも食べやすい安心・安全なピザを」(徳正さん)と、行き着いたのが、道産小麦粉にバジルやオレガノ、タイムなど8種類のハーブやスパイスを練り込み、自家製の天然酵母で前日からじっくり寝かせて低温発酵させた味わいのある生地。窯で焼くと、耳まで柔らかく、モチモチしてふっくらした、ミトン(布製の鍋つかみ)のようなピザになった。

室​蘭​市​八​丁​平​の​公​民​館​で​開​か​れ​た​「​ベ​ビ​マ​ピ​ザ​」​。​11​組​の​親​子​が​参​加​し​て​和​や​か​に​交​流​し​た​(​ミ​ト​ン​ピ​ザ​提​供​)​

ただ、開店した昨年4月は新型コロナ禍のただ中。しばらくテイクアウト中心の営業を余儀なくされ、同年8~9月は臨時休業。そんな中でSNSで知り合ったのが室蘭市のベビーマッサージ講師林美帆さん。「子育てママの癒やしにぴったり」と、感染対策をしながら店でベビーマッサージを体験してもらい、ピザを食べて交流するワークショップ「ベビマピザ」を開催した。

ただ、新型コロナなどの影響で店に来られない人も多い。「ならば自分から焼きたてピザを届けよう」と同年10月、キッチンカーを購入するためクラウドファンディング(CF)を開始。目標の150万円を超える220万円を集め、オレンジ色の車体も鮮やかなピザカーを今春、導入した。

CF​で​導​入​し​た​ミ​ト​ン​ピ​ザ​の​キ​ッ​チ​ン​カ​ー​。​車​内​の​改​造​や​塗​装​も​自​分​た​ち​で​行​っ​た​(​ミ​ト​ン​ピ​ザ​提​供​)​

CF​で​導​入​し​た​ミ​ト​ン​ピ​ザ​の​キ​ッ​チ​ン​カ​ー​。​車​内​の​改​造​や​塗​装​も​自​分​た​ち​で​行​っ​た​(​ミ​ト​ン​ピ​ザ​提​供​)​

6月28日、徳正さんがピザカーで訪れたのは室蘭市八丁平の公民館。11組の親子がベビーマッサージで触れ合い、ピザを食べながら子育ての悩みなどを話し合った。「このご時世、赤ちゃんやママが自由に遊べてお話しできる場所があってうれしい」「ピザめっちゃおいしかったです! 帰ってきてから娘は爆睡でした」。新型コロナで家に閉じこもりがちだった参加者の感想は喜びにあふれていた。

徳正さんはいう。「この国って、子育てするママへのサポートが少なすぎると思いませんか。小さい子を持つお母さんたちを少しでも助けようという動きが道内全体に広がれば」(編集委員 和田年正)

MEMO

洞爺湖町洞爺湖温泉144の46(わかさいも本舗洞爺湖本店向かい)。営業は土曜と日曜の午前11時~午後4時。営業日時やキッチンカーでの出店は店のインスタグラムなどで告知する。電話090・4728・4755。

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