学校で「あだ名」禁止 ルール化される理由とは?

授業中は「さん・君付け」、休み時間は自由な呼び名で呼ぶ七重小の児童たち

子どもの友達同士の呼び方は「さん・君」付けか、呼び捨てか、それともあだ名も認めるか―。友達同士をあだ名で呼ぶことを小学校が禁止することの是非などについて、SNSを中心に議論になっている。道南の学校はどう対応しているのか。教育現場を訪ねた。

専門家「不適切ならその都度指導を」

「かい君の考えに意見のある人はいますか?」。4月中旬、七飯町立七重小(町本町)6年生の教室。学年目標を決める学級活動の時間に、進行役を務めた福島大吉君(12)は挙手した児童にこう声をかけた。その後も「ゆあさんどうぞ」「けいすけ君の意見はどうですか」などと語りかけた。

授業が終わるとすぐに呼び方を切り替え、下の名前に敬称をつけず、呼び捨てにした。福島君は「1年生の時から、授業中はさん・君付け、友達との日常会話は呼び捨てにしている。自然と身につき、慣れました」と笑顔で話す。渋谷智実教頭は「相手を思い、TPO(時と場所、場合)に合った呼び方をするよう指導している」と語る。

いじめ防止

学校でのあだ名禁止の主な目的は、いじめの防止だ。SNS上では「あだ名で嫌な思いをしたから、禁止に賛成」「帰宅後も息子が友達をさん付けで呼んでいて、違和感がある」と、賛否が分かれている。

市場調査会社「日本トレンドリサーチ」(東京)は昨年11月、10~90代の男女計1400人にインターネット上であだ名禁止に関するアンケートを実施した。小学校の時にあだ名があったという966人のうち、嫌な思いをしたことが「ある」が36.7%、「ない」が63.3%。小学校の校則でのあだ名禁止については賛成18.5%、反対27.4%、どちらでもないが54.1%という結果になった。

道教大付属函館小(函館市美原3)では、友達同士の呼び方は児童に任せている。下の名前の呼び捨てが多く、低学年では「ちゃん・君付け」をする児童も。新田英樹副校長は「児童同士の距離感を大切にしつつ、容姿をからかうといった不快な呼び方があれば、指導していく」と話す。

各校が判断

児童生徒の呼び方については、多くの場合、各校の判断に委ねられている。小学4年と中学1年の息子がいる函館市内の母親(43)は「先生の前でさん・君付けをしても、陰であだ名を付けることもある。子どもの望む呼び方で呼ぶのが良いのでは」という。

石狩管内で小学校教員を20年務めた道教大教職大学院の杉本任士准教授(行動分析学)は「親しみを込めた愛称でも、言われた本人が不快に感じれば悪口と同じ。呼び名はいじめの端緒になりうる」と指摘。その上で「一律にあだ名を禁止しなくても、不適切な呼び方をその都度教員が指導することが大切」としている。

取材・文/菊池真理子(北海道新聞記者)

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