お金の管理、小遣いで学ぼう 親子で契約書 計画性養って

電子マネーやキャッシュレス決済の普及で、子どもたちが現金に触れる機会が減っています。「お金は使うと減る」という実感が薄れ、経済の仕組みにも関心が向きづらくなる懸念もあります。ファイナンシャルプランナーで、子どもや保護者向けにお金に関する講座を開く「キッズ・マネー・ステーション」(東京)の認定講師を務める日下道子さん=函館市在住=は「小学生のうちから、小遣いなどでお金の計画的な管理や使い方を身に付けてほしい」と呼び掛けます。

キッズ・マネー・ステーション講師・日下さんに聞く

JR北海道の「Kitaca(キタカ)」、札幌市交通局の「SAPICA(サピカ)」といったICカード乗車券や、インターネットゲームの課金が子どもたちの間にも広がっています。日下さんは「大人もキャッシュレス決済やネット通販で買い物することが多いため、子どもが現金のやりとりを目にする機会が少ない。中高生になっても金銭感覚が育たない恐れがあることを、大人も子どもも認識してほしい」と訴えます。

使い道を把握

小さいころからお金の大切さや使い方を学ぶにはどうしたらいいのでしょうか。日下さんが勧めるのが「おこづかい契約書」を使った「マネー教育」です。

子どもが保護者と話し合って小遣いの使い方を決める仕組み。まずは、必要なものの中で、小遣いで買うものを考えてみましょう。

次は、1カ月の小遣いの金額。「自分のために使うお金」、プレゼントなど「人のために使うお金」、「いざというときのお金(貯金)」に分けて考えると、適正な金額が見えてきます。

小遣いを受け取る日や、手伝いは何をいつするのか、約束を守れたか報告する方法も決めます。「契約書という形を取ることで、お金を使う責任感や約束を守る倫理観も育ちやすい」と日下さん。小遣い帳やアプリを使って、買ったものと金額を記録し、振り返ることも大切だとアドバイスします。

小遣いでお金の管理や使い方を学ぶ流れ

玩具メーカーのバンダイが2019年に小中学生の子どもを持つ全国の保護者900人を対象に行った調査によると、1カ月の小遣いの平均は小学1~3年が1207円、小学4~6年が1996円、中学生は2449円。回答者の約8割は小遣いは子どもが管理していると答え、使い道では小中学生とも飲食物や文房具、漫画が上位を占めました。

小遣いの1カ月平均額

小遣いの使い道(複数回答)

ホームページの活用も

キッズ・マネー・ステーションのホームページは、子どもがお金について考えるのに役立つ絵本を紹介しています。NPO法人金融知力普及協会(東京)が考案した「エコノミカ」など経済や金融の仕組みを楽しみながら学べるゲームも増えており、東京証券取引所のホームページには小学生から大学生向けに会社や株取引について解説する「なるほど!東証経済教室」というコーナーが設けられています。

日下さんは「英国やオーストラリアなどに比べると、日本はお金に関する教育が遅れている。お金やものを大切にする心を育むマネー教育は生きる力の礎になることを多くの人に理解し、実践してもらいたい」と話しています。

お金の教育に役立つツール

学校でも金融知識重視

人生100年時代に見合った資産の備えや知識が必要になっていることを踏まえ、学校の教育課程でも金融知識が重視され始めています。

2022年度から始まる高校の新学習指導要領は、家庭科で「資産形成の視点」に触れるよう規定しています。生徒は預貯金、民間保険、株式、投資信託といった金融商品のメリット、デメリットのほか、生涯を見通した経済計画には老後の備えや失業などリスクへの対応が必要なことを学びます。

21年度に全面実施された中学校の指導要領にも、家庭科で計画的な金銭管理を学習することが盛り込まれました。

取材・文/水野富仁(北海道新聞記者)

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