親子で楽しいおうち時間を。絵本セラピストが選ぶ、子どもとママへおすすめの絵本15選

家の中であたたかくして過ごす時間が心地よいこの季節。親子でゆっくり絵本を読んで楽しみませんか? 「めめさん」の愛称で親しまれる絵本セラピスト®︎の森景子さんが、子育ての味方になってくれる絵本の魅力を解説。親子で読みたい絵本や子育てを頑張っているママ、プレママにおすすめの絵本15冊を選んでくれました。

子どもの心を育てる絵本の読み聞かせ

絵本セラピストの「めめさん」こと、森景子さん

絵本セラピストの「めめさん」こと、森景子さん

みなさんは、お子さんと一緒に絵本を楽しんでいますか? 忙しいときなどは、絵本の読み聞かせを負担に感じてしまうことがあるかもしれません。そんなママに「無理しなくてもいいのよ」と優しく声をかけるのが、札幌在住の絵本セラピスト「めめさん」こと、森景子さんです。

赤ちゃんから大人まで幅広い世代に向けた絵本講座や絵本セラピーを通して、絵本の奥深さや魅力を伝えてきた、めめさん。「絵本を読んであげなくちゃという義務感よりも、まずはママも一緒に楽しむのが一番」と話します。

そこで、子育てにとって絵本とはどういう存在なのか、めめさんにお聞きしました。

「子どもが生きていく上で、大切なのが人を信じる力、そして自分を信じる力です。この信じる力を育むのに、絵本の読み聞かせが大きな役割を果たしています。絵本を通して、ママと子どもの間で『おいしそうだね』とか『寒そうだね』『よかったね』といった疑似体験や感情が共有できるんです。読み聞かせは言葉の発達にも役立つと言われていますが、何より大好きなママと絵本の世界を共有できる時間が、子どもの信じる心を育ててくれます。絵本にはたくさんの力がありますね」

大人は絵本を「読み」、子どもは絵本の世界を「体験する」

森景子さん

絵本の読み聞かせをしていると子どもから「もう1回」「もう1冊」とせがまれて、家事の時間がなくなる、なかなか寝てくれないといった状況に困ってしまった経験、ありませんか? 子どもの「もう1回」について、めめさんは「大人と子どもとでは、絵本の読み方が違うんです」と話します。

「子どもは絵本を読むとき、大脳辺縁系という感情をつかさどる脳を使っています。つまり感情で絵本を読み、物語の中に入り込んで主人公になり切っているんです。絵本を読んでほしい時の『もう1回』は、ブランコに乗ったり抱っこでぐるぐる回ったりしたときの『もう1回』と同じ。大人もジェットコースターに乗った時、『もう1回乗りたい』と思いますよね。それと同じなんです。そう考えると子どもの気持ちが理解できますよね。時間的に無理な時は、子どもが楽しかったという気持ちに寄り添って『おもしろかったね』とまず共感を示し、その後で『でも、今日はママ疲れちゃった〜』などとママの事情を話せば、子どもはわかってくれますよ」

子どもは感性で絵本を読む一方、大人は理性で絵本を読んでいるとめめさんは言います。

なぜなら大人はストーリーの中に入るのではなく、経験と照らし合わせてストーリーを自分に引き寄せるからです。そして理性で読んでいるので、物語が理解できたらそれで満足してしまいます。でも、子どもは絵本の世界に入り、冒険や体験をしているので、何度でも楽しむことができます。

「大人は絵本を読みますが、子どもは絵本の世界を体験しているんですよ」とめめさん。だからこそ、言葉が理解できない赤ちゃんでも、音と絵で十分に楽しめているのだそうです。

では子どもにどんな絵本を読んであげたらいいのでしょう。めめさんから、年齢別に絵本の選び方とおすすめ絵本を教えてもらいました。

【0〜2歳向け】絵本の選び方とおすすめ4冊

0・1・2歳におすすめの絵本

赤ちゃんの絵本はストーリーに関係なく、『オノマトペ』など音の響きが楽しいものを選びましょう。赤ちゃんには、まだ物の概念がないので、音の響き、色や形が変化していくようなものを取り入れながら、身近なものに興味を持てる絵本を選ぶといいですね。

話の展開や知識を入れるための絵本ではなく、耳から聞いて目で楽しめる感性に響くような絵本を選んであげましょう。0~2歳の子どもの生活は、食べる、遊ぶ、寝るが基本。こうした生活のリズムが題材になっている絵本もおすすめです。

ぶぅさんのブ

いろんな思いがこもった「ブー」の言葉が楽しめる
『ぶぅさんのブー』
100%ORANGE/作 及川 賢治/作 竹内 繭子/作
福音館書店 880円

「ブー」しか言わないブタのぶぅさん。遊ぶ、食べる、寝るといった繰り返しはまさに赤ちゃんの生活そのもの。一緒に「ブー」と言って親子で遊びながら読んでください。

ぴたっ!

ページをめくるとうれしくなる、あたたかい絵本
『ぴたっ!』
あずみ虫/作・絵
福音館書店 1,320円

ゾウやラッコやキリンの親子が、ぴたっとくっつく様子が描かれた絵本。子どもとぴたぁ~っとくっつきながら、ゆっくりやさしく「ぴたぁ~っ」と親子で一緒に声に出して読んでください。

くだもの

手を伸ばしたくなる、おいしい果物の絵本
『くだもの』
平山和子/作
福音館書店 990円

みずみずしい果物が実物大で描かれています。果物の名前と「さあ どうぞ」が繰り返され、最後に、自分で皮をむいたバナナを誇らしげに持ち、こちらを見ている女の子が出てきます。そこに添えられた「じょうずにむけたね」という言葉が、子どもの自己肯定感へとつながります。作者は果物を通して子どもの自立を見守っているのかもしれませんね。

もこ もこもこ

詩人と異色の画家がおりなす不思議でおかしな世界の絵本
『もこ もこもこ』
谷川俊太郎/作 元永定正/絵
文研出版 1,430円

地面から何かが「もこ」と出てきて、「もこもこ」と大きくなり、形を変えながらやがて宇宙へと広がるような、エネルギーを感じさせてくれる絵本。小さな子どもにとっては、音の響きや色、形の変化がたまらなく楽しい1冊です。

【3〜4歳向け】絵本の選び方とおすすめ4冊

3・4歳におすすめの絵本

赤ちゃん時代、生活の中心は家の中ですが、3、4歳になると子どもの目線も外の世界へとどんどん広がっていきます。絵本を通して身近な『なぜ?』に触れる機会を増やしたいものです。日本には素晴らしい科学絵本がたくさんあります。植物や昆虫、太陽や月など身近な自然をテーマにした絵本で、子どもの“不思議の芽”を育てていきましょう。

たんぽぽ

身近なたんぽぽの不思議を見事に描き出す
『たんぽぽ』
平山和子/文・絵 北村四郎/監修
福音館書店 990円

たんぽぽの根がどれくらい長いか知っていますか? 綿毛がどんな風に運ばれているか知っていますか? この絵本は身近なたんぽぽを通して、植物の生態の不思議さに気づかせてくれます。

きんぎょがにげた

逃げたきんぎょを絵本の中から探してみよう
『きんぎょがにげた』
五味太郎/作
福音館書店 990円

ある日、水槽の中の金魚が逃げ出し、家の中のいろいろなところに隠れ、やがて窓から外の世界へと出ていくお話しです。逃げた金魚が絵の中のどこにいるか、探しながら読み進める楽しみもあります。最後に、どうして金魚が逃げたのか、子どもにはきっとその理由がわかります。

眠らないコッコさんとお月さまの対話
『おやすみなさいコッコさん』
片山健/作・絵
福音館書店 990円

「まだ寝たくない!」という子どもの気持ちに寄り添った絵本。池の水も魚も、犬も、お兄ちゃんも眠ったけど、コッコさんは寝たくありません。月明りが見守る絵の中に、繰り返し出てくる言葉、やがて眠りにつくコッコさん。こんな本を読んでもらいながら眠りにつける子どもは、どんなにか幸せでしょう。

日本を代表するロングセラー絵本の一冊
『わたしのワンピース』
にしまきかやこ/絵・文
こぐま社 1,210円

真っ白な布で作ったワンピースを着てお花畑に行くと、ワンピースが花の模様に。雨が降ってきたら、水玉模様に。ワンピースの模様が次々に変化するストーリー。読み進めるうちに、子どもは次にどんな模様に変化するのか予測するようになります。この予測が当たるという体験が自己肯定感につながります。「繰り返し」の表現は、昔話や絵本のお話に多く出てきます。

【5〜6歳向け】絵本の選び方とおすすめ3冊

5・6歳におすすめの絵本

5、6歳には『ナンセンス絵本』と呼ばれるジャンルもおすすめです。大人は頭で理解しようとするので、その面白さが伝わりづらいのですが、感性が豊かな子どもはこの面白さに夢中になります。また、徐々に少し長めのお話しも読んでいくと、児童書への入口につながります。文字が読めるようになっても、親子で楽しむ読み聞かせの時間を大切にしてほしいです。

へんてこへんてこ

ナンセンス作家・長新太さんが描く、楽しいお話
『へんてこへんてこ』
長新太/作
佼成出版社 1,430円

ナンセンス絵本の大家といえば、長新太さん。この絵本は、橋を渡ると体と名前が伸びてしまうという内容。ネコが渡ると「ネーーーコーーーー」という具合です。自分の名前やお友だちの名前も伸ばして言ってみようという能動的な楽しみ方ができます。大人も子どもも一緒に楽しめるナンセンス絵本です。

みるなのくら

日本の四季折々が美しい昔話絵本
『みるなのくら』
おざわとしお/再話 赤羽末吉/画
福音館書店 1,430円

日本の昔話です。5、6歳になると主人公の心情を読み取れるようになってきます。ストーリーだけでなく、その裏側にある主人公の気持ちがわかり、お話のおもしろさに深みが出てきます。このお話は、「見てはいけない」と言われている12番目の蔵を前に、主人公がどうするのか、揺れ動く気持ちにハラハラ、ドキドキ。児童書の入口としてもおすすめの1冊です。

おほしさまのちいさなおうち

豊かな自然に恵まれたオーストラリア在住の夫妻による色鮮やかな絵本
『おほしさまのちいさなおうち』
渡辺鉄太/文 加藤チャコ/絵
瑞雲舎 1,430円

英語圏の国々で、秋になると語り継がれてきたお話しを絵本にした1冊。主人公の男の子は、お母さんに教えてもらい、赤い小さなおうちの中に住んでいる星を探しに出かけます。見つけたのは1つのリンゴ。半分に割ってみるとそこには……。読み終わったら、家にあるリンゴを切ってみて、主人公と同じ体験をしてみてください。

ママ・プレママにおすすめの絵本

絵本は子どもだけのものではありません。ママの心にも染みる絵本がたくさんあります。育児に疲れたときに元気をくれたり、読んだ後に子どもをギュッと抱きしめたくなったりする絵本、これから生まれてくる赤ちゃんに思いを馳せる絵本などを紹介します。

『あなたがうまれたひ』

あなたがうまれたひ

プレゼントにも最適な一冊
人が生まれてくるのは、どういうことなのかを教えてくれます。海の潮の満ち引きが、赤ちゃんの誕生に関係していることを含め、赤ちゃんの誕生は家族だけでなく、宇宙のすべてに祝福されていることが感じられ、命を宿す奇跡を実感できます。

デブラ・フレイジャー/作 井上荒野/訳
福音館書店  1,430円

『あなたをまつあいだに』

あなたをまつあいだに

生まれてくる赤ちゃんへ、母親からのあたたかく深い愛情が伝わる絵本
赤ちゃんを身ごもってから、生まれてくるまでの時間の経過に思いを馳せる絵本です。あなた(赤ちゃん)を待つ間に、青虫はチョウになり、タンポポは綿毛になり、雨は雪になり、ママのお腹は少しずつ大きくなっていく。時間の流れによる自然界の変化を、お腹の中で育ちゆく赤ちゃんと重ね合わせながら、誕生を待つ心あたたまる1冊。

エミリー・ヴァスト/作 河野万里子/訳
ほるぷ出版 1,650円

『小鳥の贈りもの―おおぞらに向かって飛び立つあなたへ』

小鳥の贈りもの

未来の自分を思い描いて、おおぞらに向かって飛び立つあなたへ
1羽のひなが生まれ、成長し、飛び立っていくまでのストーリー。子育てや日々の生活にちょっと疲れたり、落ち込んだりしたとき、自分のことや子どものことを他人と比べてしまうときなど、さまざまなシチュエーションでやさしく寄り添い勇気をくれる絵本です。いつか子どもが巣立つときに手渡してあげたい1冊。

ピルッコ・ヴァイニーオ/作
山川紘矢・山川亜希子/訳
アノニマ・スタジオ 1,210円

『手と手をつないで』

めぐる季節をたどりながら、まだ見たことのない世界への一歩を導く愛情あふれる絵本
世の中は喜びにあふれていることを伝えてくれる絵本です。移り変わる季節の中で、同じ景色を眺める2匹のネズミ。語りかけるような前向きな言葉にも元気をもらえます。心が疲れたとき、ママが一人で読むのもよし、子どもと一緒に読むのもまたよし。きれいな絵にも癒されます。

マーク・スペアリング/文
ブリッタ・テッケントラップ/絵 三原泉/訳
BL出版 1,760円

教えてくれたひと

森 景子さん(愛称:めめさん)

絵本セラピスト®︎・絵本専門士。

もり・けいこ 幼稚園教諭や幼児教室の先生を経験し、2012年絵本セラピスト®︎に。「子どもたちが笑顔でいるためには、まず大人を笑顔にしなくては」という想いから、定期的に大人や親子を対象とした絵本セラピーを開催。絵本講座も含め、9年間で延べ2,000人以上が受講。全国各地で講演活動も行う。
https://www.ehonno-mori.com/

    取材・文/菅谷環 写真/國枝琢磨 撮影協力/HOME LAB(ホーム企画センター)

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