子どもの付き添い入院 コロナ下で(上)|24時間、気も体も休まらず

今回の付き添い入院では、長男のベッド脇に簡易ベッドを並べて眠りました。子どもが乳幼児の頃は転落防止用の高い柵が付いたベッドで添い寝しました

今回の付き添い入院では、長男のベッド脇に簡易ベッドを並べて眠りました。子どもが乳幼児の頃は転落防止用の高い柵が付いたベッドで添い寝しました

子どもの付き添い入院を知っていますか? 小さな子どもが入院する際、保護者が一緒に病室に泊まり込み、24時間付き添うことを言います。病院によってルールは異なりますが、道内の小児病棟のある病院のほとんどが、付き添いを原則としています。


自分自身も何度か経験しましたが、付き添い者の生活環境は厳しいものがあります。子どもが病気というだけでも精神的につらいものですが、患者ではない付き添い者の食事やベッド、入浴といった生活を営む上での環境は、十分に整っていないのが実情です。しかし、付き添い者へのケアや支援、制度は、これまで盲点とされてきました。

経験者として、多くの人に付き添い入院の現状を知ってほしい。そんな思いから3回の連載を始めます。初回は記者の体験から―。 心臓に疾患のある8歳の長男が今春、検査のため札幌市内の病院に3泊4日で入院しました。生後すぐだった初回から数えると、私にとっては6回目の付き添い入院でした。

ただ、新型コロナウイルスの影響で、院内への出入りは気軽にできず、付き添い者の交代や他の家族の面会は原則禁止になっていました。これまでは家族と交代で付き添いながら、なんとか仕事と両立してきましたが、今回はそれが難しく、私が休暇を取って病院に泊まり込みました。周囲を見ても付き添い者の大半は母親。地方から転院してきた家族も少なくありませんでした。

一般病室は4人用の大部屋。隣の患者とカーテン1枚で仕切られた空間が入院中の主な「生活」の場でした。子どもは基本的にはベッドの上で一日を過ごしますが、すぐに退屈してしまい、病棟内の廊下を一緒にぐるぐる歩いたり、おもちゃやボードゲームなどが置いてあるプレイルームで遊んだりして過ごしました。

硬いベッド、巡回 眠り浅く

子どもの検査や治療もそばで見守ります。ただ、顔をしかめて痛みに耐える子どもを見るのは、こちらもつらいものがあります。手術や負担の大きい検査の後、病室に運ばれてくる子どもの姿を見ると、無事に戻ってきてくれたという安堵(あんど)感と、管をたくさん付けた痛々しい姿に、毎回切なくなりました。

「よかったね」。そんな時、同室の親たちが一緒に喜んでくれたのが心の救いでした。医師や看護師はもちろんですが、同じ立場で付き添う親たちは一緒に闘う同志のような存在と言えます。

ただ、付き添い者の生活環境は過酷としか言いようがありません。まず睡眠。今回は院内の折りたたみ式簡易ベッドをレンタルし、子どものベッド脇に並べて寝ました。

寝返りを打つと硬いベッドがギシギシと鳴り、同室の親子の睡眠を妨げないかと気を使いました。絶え間ないモニター音や医療者の巡回などで頻繁に目が覚めました。眠りは浅く、体はガタガタ。休まる気がしませんでした。 赤ちゃんや乳幼児に付き添う周囲の親たちは、一緒のベッドで体を曲げて眠っていました。

食事はコンビニのカップ麺

食事にも困りました。患者には病院食が用意されますが、付き添い者にはないのが一般的になっています。今回も子どもの検査や巡回などがない時間を見計らって、院内のコンビニに猛ダッシュしました。

「どこに行っていたの?」。それでも、戻ると子どもは不安げな顔で訴えました。周囲の親も、食べていたのはコンビニのカップ麺やおにぎり、菓子パンが中心で、時間がなくて食事を取れない人の姿もありました。

寝不足に栄養不足。これが長期間続けば体調を崩すだろうなと思います。それでも、半年近くも付き添いが続いている同室の札幌市の母親(39)は、こう言いました。「子どものため、自分が倒れるわけにはいかない」-。

「親の笑顔が子どもの安心につながる」との思いから、道内外の付き添い経験者らが動きだしました。次回では、付き添い者への支援の動きを報告します。

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

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