コロナ禍で子育て教室開催など制限 情報入手に育児アプリが人気

スマホのアプリに授乳時間と飲んだ量を入力する笹岡理奈さん。「アプリは育児に欠かせない道具」と言う

子育て世代にスマートフォン用の育児アプリが人気です。新型コロナウイルスの影響で子育て教室の開催や親同士の交流が制限される中、育児情報が手軽に得られ、子どもの健康状態の記録や予防接種の日程管理が簡単にできる機能も搭載していることが魅力となっています。ただ、専門家は「アプリは医療者の役割は果たせない」と指摘し、健康状態に異変を感じたら、すぐ医療者に相談するよう呼びかけています。

成長記録や日程管理 自治体も続々導入

札幌市の看護師、笹岡理奈さん(31)は、生後4カ月の長女に授乳する度に無料アプリ「授乳ノート」を開き、授乳時間と飲んだ量を入力します。排せつや睡眠時間も記録でき、夫も自分のスマホにダウンロードし、どちらかが入力すると情報を共有できます。

「私が娘に付き合い明け方まで起きていた日は、夫が就寝時間の記録を見て大変だったと気づいてくれ助かってます」と笹岡さん。

アプリは「カラダノート」(東京)が開発。出産前には、陣痛の間隔を測定する同社のアプリ「陣痛きたかも」に記録したデータを担当医の問診で示し、アプリから提供される専門医監修の医療情報も参考にしました。「3歳の長男が生まれた時は子育て教室やママ友との交流で育児の悩みを相談できたが、コロナでそれができず、今はアプリが頼り」と言います。

3児の母で妊娠8カ月の札幌市の会社員、黒田日加里さん(32)は、予防接種の日程管理にアプリを利用します。3人の接種予定が混乱しがちですが、予定日が近づくとアプリが通知してくれるので安心です。

育児アプリ開発7社でつくる「子育Tech委員会」(東京)によると、業界は急成長中で、現在国内約80社が100種を超すアプリを提供しています。委員会は7月、消費者がアプリを選びやすいように、51社の57サービスを用途別に分類した「子育Techサービスカオスマップ」をホームページで公開しました。

育児アプリの例

道内の自治体も育児アプリの提供を始めています。札幌市は2017年度に「さっぽろ子育てアプリ」の提供を開始、今年9月末までに計3万4千人がダウンロードしました。コンテンツ配信会社「エムティーアイ」(東京)の母子手帳アプリ「母子モ」は27市町村、NTTドコモなどが開発した「母子健康手帳アプリ」は6市町に導入されています。

自治体の育児アプリは、健康診断や子育て教室などの地域情報が配信されるのが特徴です。今月20日に導入した十勝管内幕別町は、地元保健師らの育児指導の動画配信やオンライン相談機能も搭載していく計画です。

育児アプリに詳しい釧路公立大の皆月昭則教授(システム工学)は、利用する際の注意点として「医療者ら専門家が監修した信頼できるアプリを選ぶこと」と強調。「アプリに記録した健康状態に異変を感じたら専門家に相談し、データを相談に生かすことが大切」と話しています。

取材・文/佐竹直子(北海道新聞記者)

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