乳幼児予防接種が激減 コロナで道内2月以降 小児科医ら「予定通りに」

円山ため小児科で予防接種を受ける乳児=6月

新型コロナウイルス感染が拡大した2月以降、道内の医療機関で乳幼児向けワクチンの定期予防接種者数が例年のペースを下回ったり、接種のタイミングが遅れたりする例が目立っている。医療機関で子どもが新型ウイルスに感染することを保護者が恐れ、受診を控える影響などがあるためだ。小児科医らは推奨時期を逃すと効果的でないとして「スケジュール通りに接種を」と呼び掛けている。


「病院で感染しないか、心配でした」。6月下旬、3カ月の長男の予防接種で札幌市中央区の円山ため小児科を訪れた主婦の和田絵理さん(36)は話した。「でも予防接種を受けさせるのは親の責任だから」

来院時の案内難しく

同小児科ではコロナ禍以前から予防接種と外来の時間帯を分けているが、2月以降の受診人数は前年同期比で半減し、接種人数も3割減った。多米(ため)淳院長は「例年は発熱などで来院した際、保護者に予防接種の重要性を伝えられたが、今年は受診控えで声をかけられないことも接種人数が減っている要因」と懸念する。

札幌市保健所によると、同市内の小児科などで今年1~5月に行われた定期予防接種の総件数は前年同期比7.4%減の1284件。特に感染の拡大が著しかった2~4月は減少幅が10%を超えたという。4~5月の予防接種が前年同期比1割減だった同市厚別区のたむら小児科の田村正院長は「少子化の影響も考えられるが、来院控えが一定数あるのは間違いない」と指摘する。

旭川市や函館市、釧路市によると、各市とも今年の予防接種は前年比で1割前後減った。旭川市内の土田こどもクリニックは当初半減していた予防接種が6月に前年比3割減まで戻ったが、土田晃院長は「生後2カ月での接種が推奨されるワクチンを、生後3~4カ月に先延ばしするケースが目立つ」という。道小児科医会の渡辺徹会長は「再び感染が拡大する恐れもあり、今後も接種の延期が懸念される」と危惧する。

「不要不急」該当せず

NPO法人「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子どもを守ろうの会」(東京)は「ワクチンの接種時期は効果的な年齢や安全性を踏まえて決められている」と強調。同会のホームページで予防接種のスケジュール管理ができるアプリを無料公開しており、「予防接種時の感染の不安があれば、近くの小児科に電話などで相談してほしい」と呼び掛ける。各市の担当者も「予防接種は『不要不急の外出』に該当しない」と強調している。

取材・文/柳沢郷介、山岡正和(北海道新聞記者)

定期予防接種

感染症の発生やまん延を防ぐため、予防接種法に基づき国が推奨するワクチン接種で、各自治体が指定する「予防接種協力医療機関」で主に実施している。原則無料だが、接種対象年齢を過ぎると、費用が自己負担の「任意接種」の扱いとなる。細菌性髄膜炎を予防するヒブや、小児用肺炎球菌、4種混合、BCGなどがあり、早いものは生後2カ月で接種が必要。嘔吐(おうと)や下痢を起こすロタウイルス胃腸炎のワクチンも今年10月から対象となる。

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