学習環境整えて 春の新入学準備の注意点

写真はイメージ

春の新入学に向けて、準備を進める時期。ランドセルに加え、学習机や勉強道具の置き場所など、子どもの学習環境も整えておきたいところです。インテリアデザイナーやベテラン家庭教師は、机の選び方や配置、いすの座り心地などによって「集中しやすさが変わってくる」と指摘します。

白い天板の机お薦め

木目調の机には、デスクマットを敷く。白のほか、集中して暗記したい時には黄色もお薦め

木目調の机には、デスクマットを敷く。白のほか、集中して暗記したい時には黄色もお薦め

まずは学習机の選び方。棚や引き出しがセットになったシステム型の学習机を子どもが欲しがるケースは多いですが、Mako教育研究所(札幌)を主宰するインテリアデザイナーの渡辺真琴さん(45)は「必ずしも必要ないでしょう」と話します。木のぬくもりに満ちた木製の机も「リラックスして読書や書き物をする時は良いですが、計算問題などを集中して解くには不向き」と指摘します。

お薦めは、オフィスで使うような無機質の素材。特に白い天板を選ぶと、教科書やノートの文字がくっきりと浮かび上がって見え、認識しやすいといいます。木製の机を買う場合も、色はナチュラルではなく白を選ぶか、天板にデスクマットを敷きます。デスクマットはキャラクターが描かれたものよりも無地の方がよく、合成皮革製の無地のマットはインターネット通販で2千円前後で購入できます。

いす選び 高さが大切

いすは足が床につくようにする(足元にあぐらクッションを置いた例)

いすは足が床につくようにする(足元にあぐらクッションを置いた例)

いす選びは「机以上に大事です」と渡辺さん。足の裏が床につき、足を踏ん張れる環境で学習することは、集中するには絶対に必要と言います。

いすが高い時は、段ボールや市販の踏み台、新聞を積んだものなど「何でも良いので置いて、足が床につくようにしてあげて下さい」。いすの座面と机の高さの差は、子どもの体格により20~30センチ程度。学習中の子どもの姿勢が崩れている場合は、机やいすの高さが合っていない可能性があるので、調整します。

特性に応じて 配置は柔軟に

机はどう配置すると良いでしょうか。渡辺さんは、子どもの特性に応じて「壁向き」「外向き」の2通りから考えるよう提案します=図=。「壁に向かった方が集中できる人と、窓の外や部屋全体が見渡せる場所など、外に向かった方が集中しやすい人がいる」と渡辺さん。子どもに両方を体験させてみて、学習に取り組みやすい方を選ぶと良さそうです。

勉強部屋とベッドを置く部屋は、できれば分けるのが理想的といいます。「ベッドが目に入る状態で、学習に集中できる人はまずいません」と渡辺さん。広い子ども部屋に学習机とベッドを置く場合は、ベッドが目に入らない向きに机を置くか、パーテーションで仕切るよう勧めます。

中学生になると、天板の広い机が必要になります。教科書とノートに加え、副教材やワーク、プリント類を広げる場合があり、システム型の学習机は上の棚を外すなどして奥行きを確保すると良いといいます。

集中力をアップ 勉強場所の主流はリビング

子どもの勉強場所

近年は子ども部屋ではなく、リビングや食堂など家族の集まる場所で勉強する「リビング学習」が主流になっています。

ベネッセ教育総合研究所などが小学1年~高校生の親子計1万6千人に2016年に行った調査=表=では、「学校や塾以外でよく勉強する場所」(複数回答)として、小学1~3年生は「居間など家族で過ごす部屋」が92.8%で最多。「子ども部屋」は24.5%にとどまりました。一方、「子ども部屋」は小学4~6年生は40.6%、中学生は63.7%で、学年が上がるにつれて自室で勉強する割合が高くなる傾向がみられました。

小3の長女が入学時に学習机を欲しがりましたが購入せず、居間のテーブルで勉強しているという札幌市中央区の女性(43)は「子どもが自分の部屋で、1人で勉強するとはとても思えなかった」と振り返ります。小1~中1の3人の子を育てる同市北区の女性(48)も「下の子の世話をしながら上の子の勉強をみるには、居間が一番」とリビングで勉強させています。

親がそばにいて安心感

本多抽紀江さん

本多抽紀江さん

家庭教師歴28年の本多抽紀江(ゆきえ)さん(胆振管内安平町在住)は「10歳くらいまでは親の見えるところで勉強させ、その後は少しずつ手を離していくのが良いでしょう」とアドバイスします。小学校低学年のころは親がそばにいる方が安心して集中しやすい子が多いですが、学年が上がるとプライベートなスペースが必要といいます。

リビング学習の環境を整えるには、どう工夫すると良いでしょうか。本多さんは「照明に気を配ってあげてほしい」と指摘します。ダイニングに多い暖色系の暗い照明は学習には向かず、目にも良くないため、卓上ライトで明るさを補います。

リビング学習では、明かりを補う卓上ライトや、消しかすクリーナーを用意すると便利

リビング学習では、明かりを補う卓上ライトや、消しかすクリーナーを用意すると便利

リビングや食卓は家族が飲食やだんらんを楽しむ場所でもありますが、テレビは付けっ放しにせず、時間を決めて楽しみます。おもちゃなど子どもの気が散るような物は他の部屋に移すか、学習中は目に入らないようにすると良いといいます。テーブルに残ると気になる消しゴムかすは「専用の卓上クリーナーを使うと、親のストレス軽減に役立ちます」と本多さん。

学習用具は、子どもが勉強しようと思い立ったらすぐ取り出せる場所にあるのが理想的といいます。本多さんは、居間に専用の収納棚を用意できない場合も「普段使う学習ドリルにペンを1本挟み、ポンと置いておくスペースだけでも確保してあげると良いでしょう」と話しています。

取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

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