連載コラム「絵本はママを育ててくれる」第9回

【あおくんときいろちゃん】お絵描きで寄り添う心

チェンマイではお絵描き教室にも通いました。生徒はみんな伸び伸び楽しんでいました=2015年(谷岡さん提供)

ページに絵の具が点々、「夢中」を初体験

うちにある「あおくんときいろちゃん」は、ページのあちこちに緑色の絵の具が飛び散っています。

夫は昔からこの絵本の大ファンで、息子に読み聞かせる日を心待ちにしていました。「登場人物」は全てふぞろいの丸。心の動きで形や色が変わるのですが、息子はなかなか興味を示しませんでした。

1歳半ごろ、青と黄色の絵の具をたっぷり出し「おててで混ぜてごらん」と言ったことがあります。2色が白い器の中で混ざり合い、絵本と同じ緑が現れた時の喜びようといったら! 息子の手が生んだその色は、初めて見たもののように私と夫の心も動かしました。

作者レオーニも孫にお話をせがまれ、夢中で色付けしているうちにこの作品ができたそうです。大人も子どももわれを忘れ、心が寄り添ったからこそ、ふぞろいな丸がイキイキと動きだしたんですね。

緑色の絵の具ができた後、当時住んでいたタイの家のテラスの壁にお絵描きしました。最後はホースで水をかけて消しながら、もうひと遊び! 4歳になった今も、息子は南国仕込みの豪快なお絵描きが大好きです。昨日は家のカーペットをオイルパステルで汚してくれました。このまだら模様もいつか良い思い出になるかしら。

今回登場した絵本

「あおくんときいろちゃん」
レオ・レオーニ作、藤田圭雄訳 至光社

あおくんときいろちゃんは仲が良すぎて混ざり合い、緑色に。途方に暮れますが、自分という「色」を認識するようにもなります。デザイナーだった作者も、このデビュー作で子どもに伝える役割と喜びを知ったのでしょう。

谷岡 碧

2007年にテレビ東京へ入社、記者として秋葉原連続殺傷事件や東日本大震災の被災地を取材。12年に退社、チェンマイへ移住しNGOスタッフとして勤務。その後退職し17年に札幌へ帰郷、幼なじみのピアニストとユニット「enets」(エネッツ)を立ち上げ、絵本の読み聞かせとピアノ演奏によるコンサートを続けている。長男(4)と18年4月生まれの長女を育てる母として奮闘中。札幌市出身。

Ranking

  • すべて
  • 子育て・教育
2024
4/26
FRI

Area

北海道外

その他