連載コラム「瀬川院⻑の子育てカルテ」

就学前の予防接種 抗体価を再び上げるため

Q.質問

就学前に接種するワクチンが増えたという話を聞きました。どのようなことか教えてください。

A.回答

今年8月、日本小児科学会が推奨するワクチン接種スケジュールが改定されました。そこで新たに、不活化ポリオワクチンと3種混合ワクチンの就学前の追加接種が示されました。

不活化ポリオワクチンは現在、定期接種の4種混合ワクチンとして、1歳までに3回、1歳過ぎに1回の計4回接種されています。しかし、4回打っても抗体価は徐々に下がっていくことがわかっており、抗体を再び上げてポリオの発症を防ぐため、就学前に5回目の接種をするよう勧告されました。

日本でのポリオ発症は1980年が最後ですが、世界ではまだ根絶されていません。現在、ポリオの発症が確認された海外の国から毎年5万人以上の入国者があります。ポリオウイルスが国内にいつ入ってきてもおかしくはなく、常に備えておく必要があるのです。

3種混合ワクチンには百日ぜき、破傷風、ジフテリアのワクチンが含まれていますが、追加接種の目的は百日ぜきの予防にあります。これは4回の定期接種をしても、百日ぜきの抗体価がやはり就学前に下がっていくことがわかっているためです。百日ぜきは今でも日常診療でよくみかける病気です。生後1カ月から大人までどの年代もかかり、夜中になるとひどい咳(せき)が止まらなくなります。

就学前の不活化ポリオワクチンと3種混合ワクチンの追加接種は、4種混合ワクチンで打つことは認められていません。また、全額自費負担となる任意接種です。必要なワクチンですので、早く定期接種になってほしいと思います。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

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