子どもの眼鏡、ずれにくさ大事 U字形の鼻パッド/つるの長さ調整

初めての眼鏡でつるの長さや鼻パッドの位置を調整してもらう女の子=札幌市中央区のキッズコレクション

さまざまな理由で小さいうちから眼鏡が必要になる子どもは少なくありません。ただ、正しくかけることができるか、転んで壊してケガをしないかなどが心配です。初めての眼鏡選びはどのようなことに気をつければいいか、眼鏡に詳しい専門家に聞きました。10月1日は「メガネの日」。

正常な視力を持つ目を「正視」といいます。これに対し、子どもに多い目の異常は《1》遠くが見えづらい「近視」、近くも遠くも見えづらい「遠視」などの屈折異常《2》視力の発達が遅れる「弱視」《3》両目の視線がずれる「斜視」―があります。これらの矯正、治療に眼鏡は欠かせません。弱視・斜視が専門の札幌大庭眼科の大庭正裕院長(64)は「その子によっては眼鏡をかけるだけで、弱視や斜視が改善する場合がある」と指摘しています。

正視、遠視、近視の仕組み

札幌市中央区の小学1年生の女の子(7)は右目の弱視と、斜視の治療のため、9月から眼鏡をかけるようになりました。母親(36)は「よく見えているようで、眼鏡をしている間は斜視があまり出なくなった」と言います。

ただ、眼鏡は正しくかけないと意味がありません。道立子ども総合医療・療育センター(札幌)の眼科医、斎藤哲哉さん(64)は「レンズの中央部でモノを見ることで、眼鏡は最大限の効力を発揮する。レンズのヘリの部分だと、ゆがんで見えることがある」と強調しています。特に小さな子どもは平べったい鼻の子が多く、眼鏡がずり落ちやすいのです。「ずり落ちにくいフレームを選んでほしい。乳児には補助用のバンドを後頭部に緩めに留めるのもいいですね」と話しました。

ではどんな眼鏡がいいのでしょうか。子ども専門の眼鏡店「キッズコレクション」やそのコーナーを札幌と旭川で展開する富士メガネ(札幌)の認定眼鏡士、石田康博さん(63)は「鼻の低い乳幼児には、Uの字形の鼻パッドがついたものが、下がりにくく人気」と話しています。

子ども向け眼鏡の選び方アドバイス

ほかにも、顔の大きさに合わせてつるの長さをカットできるものや、ぶつかってもゆがみにくい樹脂製の柔らかいフレームもあります。選び方のポイントは表の通りです。石田さんは「その子の鼻の形や顔の大きさによって、ぴったりの眼鏡はそれぞれ異なる」と話しています。

成長に合わせた定期的な眼鏡の点検も重要です。日本眼鏡技術者協会北海道支部(札幌)の中川明雄事務局長(72)は、「顔や鼻の幅、骨格も成長につれて変化する。気付かないうちにフレームがゆがんでいることもあるので、少なくとも3カ月に一度は眼鏡店へ点検に行くのが望ましい」としています。

眼鏡のキッズモデルの母マツコさん 抵抗感軽減「親もかけて」

眼鏡をかけたキッズモデルとして活躍する双子の姉妹がいます。東京在住の「りんか&あんな」さん(10)。母親のmatsuko(マツコ)さん(37)に、親子が眼鏡とどう向き合ってきたのか、話を聞きました。

双子の2人は3歳で強い遠視による弱視と診断され、治療のために眼鏡をかけ始めました。マツコさんは「初めて眼鏡をかけた時、娘たちが『見える!』とびっくりしていたのを覚えています。それまでぼんやりとした世界が当たり前だったんですね」と振り返ります。

眼鏡をかけたキッズモデルとして活動する「りんか&あんな」さん。(上)は3歳のころで(下)は現在(matsukoさん提供)

眼鏡をかけたキッズモデルとして活動する「りんか&あんな」さん。(上)は3歳のころで(下)は現在(matsukoさん提供)

2人のファッションコーディネートを紹介しているInstagramには、日々「かわいらしい」と多くの人からコメントが寄せられています。一方で、眼鏡が必要になった子の親からは、見た目の変化や運動する時の不便さなどで、「子どもがかわいそう」と受け入れられずにいる声も届くといいます。

マツコさんも、姉妹に眼鏡を勧められた当初、戸惑った時期がありました。でも、「2人には見える世界を知ってほしい」との思いで、気持ちを切り替えたといいます。そこで、「おしゃれ目的でかけているのかな?」と勘違いされるような、眼鏡が浮かない洋服のコーディネートを研究し始めました。

「クラスで1人だけ眼鏡で恥ずかしい」との理由で、子どもが眼鏡に抵抗感を示す場合もあります。マツコさんは「親も、だて眼鏡をかけてみては」と提案。また、写真を撮る時も、なるべく外さずに、そのまま撮影することを勧めています。「眼鏡をかけたあなたはすてきだよ、というメッセージになると思います」

取材・文/有田麻子(北海道新聞記者)

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