連載コラム「瀬川院⻑の子育てカルテ」

遷延性下痢 食欲あれば普段の食事を

Q.質問

1歳の長男です。3週間前にウイルス腸炎になってから、下痢がずっと続いています。泥状もしくは水のような便が1日3、4回出ます。食欲もあり、いたって元気なのですが、長引いているので心配です。

A.回答

乳幼児の下痢が長引くことは珍しいことではありません。急性胃腸炎で1週間ぐらい下痢が続くことは普通です。1日3回以上の下痢が2週間以上続く場合は「遷延(せんえん)性下痢」とよびます。最も多いのはウイルスによる感染性胃腸炎に罹患(りかん)したときで、とくにロタウイルス腸炎などでひどい下痢をした後に発症します。下痢があるとはいっても、本人は食欲があり元気なのが特徴です。

遷延性下痢は、胃腸炎によって起きた小腸の粘膜へのダメージが続くために起きます。とくに乳幼児では、小腸の乳糖分解酵素の働きが低下する「二次性乳糖不耐症」が起きるため下痢が生じるとされます。

治療としては、乳糖不耐症が原因の場合、消化の悪い食物には注意しながら、母乳と人工乳をそのまま続け、乳糖分解酵素製剤などの内服を行います。人工乳を薄める必要はありません。根気よく治療することで遷延性下痢のほとんどは治ります。

下痢が続くことを心配し、本人が食べたがっているにもかかわらず食事の再開を遅らせたり、ずっとおかゆだけを続けている例をときどき見かけます。最初の嘔吐(おうと)や脱水症状などが改善し食欲がでてきたら、下痢があっても普段の食事に少しずつ戻していって構いません。食事再開を遅らせないことで、遷延性下痢のリスクが高くなることはありません。

なお、子どもさんの元気や食欲がなく、発熱や体重減少、血便などの症状がある場合は、単なる遷延性下痢ではない可能性があるので、きちんと検査をする必要があります。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

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