急性内斜視、子どもに増加 スマホ、ゲーム機 長時間避けて

短期間に目が内側に寄る急性内斜視になる子どもが増えている。悪化すると文字や物が二つに見える「複視」の症状が出るため、学校生活や日常に支障をきたす。スマートフォンや携帯ゲーム機器、パソコンなどのデジタル機器を長時間利用することによる影響が指摘されている。新型コロナウイルスの感染拡大後はデジタル機器を使う機会が増えており、注意が必要だ。

文字が二重に

「黒板の文字が二重に見えるんです」。10代後半の女性Aさんが6月下旬、札医大病院の眼科を受診した。

Aさんが急性内斜視の診断を受けたのは2年前。顔を上げた拍子に片目がぐっと内側に寄ることが度々あり、視界もぼやけるようになった。視線を真っすぐにするプリズム眼鏡をかけ、眼科医の指示通りゲームは1日1~2時間以内に抑えるようにした。

しかし、昨年春ごろから学校の課題でパソコンを使う機会が増えた上に、スマートフォンも長時間使うようになった。最近は物が二重に見えるだけでなく、朝は特に目が寄った状態になり、Aさんの母親は「内斜視は急激に悪化した」とこぼす。

内斜視は目が内側に向いている状態を指す。目は近くを見る時は通常でも少しより目になるが、目との距離が近いデジタル機器はさらにより目になる。「長時間使うとその状態を正常(まっすぐ)と脳が誤認識し、内斜視のままになってしまうと考えられます」。Aさんを診察した同病院の川田浩克講師はそう説明する。

急性内斜視は10代~20代に多く、全国調査でもデジタル機器の影響が浮き彫りになった。

日本小児眼科学会と日本弱視斜視学会が所属医師に急性内斜視とデジタル機器の使用について調査したところ、回答した371人の医師のうち、2018年の1年間で158人(約4割)が急性内斜視の患者を診察していた。このうち122人が「デジタル機器を使ったことが患者の急性内斜視発症に関連したと考えられる」と答えた。

手術も選択肢

川田浩克さん

川田浩克さん

川田さんによると、急性内斜視は物が二重に見える症状が現れるため、「教科書の文字が二つに見える」「野球でバットを振ってもボールが当たらなくなった」と訴える子どももいるという。片目だと複視にならないため片目をつぶり続ける子どもを見て、親が気付くこともある。

家庭でできる対処法はデジタル機器の使用時間を短縮すること。改善されなければプリズム眼鏡を使う。斜視の角度が大きい場合は手術が選択肢になる。手術は1時間ほどで、眼球を内側に引く「内直筋(ないちょくきん)」を緩めたり、外側に引く「外直筋(がいちょくきん)」を短くしたりして位置を調整する。同病院では入院して全身麻酔で行う。ほとんどの患者が手術で改善するが、再発することもある。

コロナ影響も

新型コロナウイルス感染症の影響で学校や塾でオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」などを使う機会が増えており、川田さんは「今後、急性内斜視を含め目の異常を訴える子どもが増加することが予想される」と懸念。デジタル機器はほかに、眼精疲労や近視の悪化、ドライアイ、調節障害(スマホ老眼)、睡眠障害などを引き起こす可能性もあると指摘する。

「スマホなら30センチ以上、パソコンなら50センチ以上は目を離し、1時間ごとに5~10分ほど目を休めてください」とし、目を守るためにもデジタル機器を「ナイトモードに設定したり、使用時間管理アプリを使うなど各家庭で工夫してみてください」と助言する。

また、斜視はまれに脳腫瘍が原因で起きることがある。このため、川田さんは「お子さんが物が二つに見えると訴えたり、目が寄り目になってきたと感じたら、早めに眼科を受診してください」と呼びかけている。

取材・文/上田貴子(北海道新聞記者)

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