連載コラム「瀬川院⻑のすくすくカルテ」第29回

母乳だけ飲むと牛乳アレルギーに? いたずらな心配は不要

Q.質問

4カ月の長男を母乳だけで育てています。先週、長男の便秘の相談で近所のクリニックを受診したところ、医師に「母乳だけを飲んでいると牛乳アレルギーになる。予防のために毎日10ミリリットルの粉ミルクを飲ませた方が良い」と言われました。本当に飲ませた方がよいのでしょうか?

A.回答

食物アレルギーに関する考え方は大きく変わりました。ひと昔前までは、アレルギーを起こしやすい食物はなるべく遅く与え、アレルギーの原因食物は除去して食べられるようになるまで待つというのが一般的でした。

しかし、今はまったく逆です。アレルギーを起こしやすい食物は、早い時期から少しずつ食べさせた方がアレルギーを予防でき、食べ始める時期を遅らせれば遅らせるほどアレルギーになりやすいと考えられています。

これは、食物に対する過剰なアレルギー反応を起こさないようにする「経口免疫寛容」という体の仕組みが、早い時期から少しずつ食べ続けることでできてくるためです。

ご質問の「粉ミルク10ミリリットルを毎日与える」というのは、生後1~3カ月の母乳育ちの赤ちゃんに少量の粉ミルクを毎日飲ませると、経口免疫寛容の働きで6カ月の時点で牛乳アレルギーを抑制できるかもしれない―という日本の報告によるものと思われます。

ただ、これはたった一つの研究結果なので、母乳で健康に育っている赤ちゃんすべてに粉ミルクを飲ませるのは行き過ぎだと思います。

現在、食物アレルギーの原因となるアレルゲンは、口だけでなく皮膚からも体内に入るとされます。赤ちゃんにアトピー性皮膚炎がなく両親にアレルギー体質がなければ、アレルギーが発症する可能性は低いので、牛乳アレルギーをいたずらに心配する必要はなく、粉ミルクを飲ませる必要はありません。

一方、赤ちゃんにアトピー性皮膚炎があったり、また両親にアレルギー体質があり母乳育児が順調になる前に粉ミルクを飲んだことがある赤ちゃんは、牛乳アレルギーが出る可能性がないとは言えないので、心配な場合は医師に相談してみてください。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

2024
4/27
SAT

Area

北海道外

その他