子どもの弱視、3歳児健診が要 目の異常、屈折検査で見分け

弱視を早期に発見することの大切さを説く、視能訓練士の池田陽介さん

視力の成長が止まり、眼鏡を使ってもよく見えない「弱視」。重症化させず、早期に効果的な治療を行うためには、3歳児健診で発見し対処することが非常に重要になります。子どもたちに将来不自由な思いをさせないようにと、弱視の原因となる目の異常の疑いがあるかどうか見分ける「屈折検査」を3歳児健診に取り入れる自治体が増えています。

視力0.3未満が弱視 子ども50人に1人の割合

日本弱視斜視学会によると、弱視は「眼鏡をかけても視力が十分でない場合」。世界保健機関(WHO)は視力0.3未満を弱視としています。子どもの約50人に1人が弱視と言われています。

 

弱視について、道立子ども総合医療・療育センターの視能訓練士、池田陽介さん(45)は「弱視は脳の機能が未発達な状態。目からの情報を明瞭に処理する能力が備わっていない」と説明します。一方で日本眼科学会は、治療に脳が反応する度合いは、3カ月~1歳半が最も高く、6~8歳以降はあまり反応しなくなる=グラフ=とのデータを提示。同学会がまとめた「3歳児健診における視覚検査マニュアル」の中で、「自覚的な視力検査が可能となる3歳児に対し、弱視の早期発見に努める」としています。

弱視発見に威力を発揮する屈折検査は、「フォトスクリーナー」と呼ばれる検査機器で行います。小さな画面をのぞくと、目の中の光の屈折の状態が数値化され、遠視、近視、乱視が判定できます。

3段階で視覚検査 まずは家庭で

視覚検査は一般的に3段階で行われています。まず家庭で、ガーゼなどで片目を隠して行う1次検査を実施。その結果を基に健診会場で医師による2次検査を行い、異常が見られた場合に眼科での精密検査に移行する流れです。マニュアルもこの方法を紹介しています。

安藤亮さん

ですが各家庭での1次検査では、幼児が視力の良い方の目でのぞき見をしたり、気が散ってしまったりして、弱視が見逃される場合は少なくありません。2次検査で再検査が行われるのは家庭での視力検査ができなかった場合や、0.5以下の視力が確認できなかった時などに限られています。北大大学院医学研究院眼科学教室の講師、安藤亮さん(46)は「この段階で屈折検査が行われれば、対象者を精度良く見つけ出し治療につなげられる」と話しています。

治療は、眼鏡をかけることで網膜にピントを合わせ鮮明な像を脳に送って視機能の発達を促す方法や、視力の良い方の目を決められた時間ふさいで弱視の側の目で見るようにする訓練などがあります。小学校入学までに、眼鏡を使いながらも視力を1.0まで引き上げることが目標です。

屈折検査 道内自治体の7割が実施

3歳児健診での屈折検査実施は道内でも広がっており、道子ども政策企画課によると2023年度中に実施する自治体は、札幌市、帯広市など127市町村で前年度から45増え、全体の70.9%に達しました。

屈折検査の機器「フォトスクリーナー」

検査機器の価格は1台約120万~140万円。国は22年度から、自治体の購入費の半額を補助しています。空知管内北部の妹背牛町、秩父別町など5町は、3歳児健診を委託する深川市内の開業医に機器を購入してもらい、その費用を5町で負担しました。5町の一つ、沼田町の保健師西尾佳代さん(57)は「就学前の子ども全員を対象に屈折検査を行ったところ、弱視の子が見つかり治療につながった」と効果を実感しています。

安藤さんは「保護者の中には近視と同じ感覚で、眼鏡をかければ視力が出ると思い込んでいる人もいる。弱視を指摘されたら、早めに眼科で精密検査を受けて」と呼びかけています。

取材・文/有田麻子(北海道新聞記者)

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