連載【0カ月からの育児塾】

原因不明の「たそがれ泣き」 どうしたらいいの?

写真はイメージ(pearlinheart / PIXTA)

生後1、2カ月の赤ちゃんが泣いて泣いて泣きまくる。何をしても泣きやまない。それが「たそがれ泣き」です。北海道助産師会会長の高室典子さん(札幌)によると3割ほどの赤ちゃんに見られ、原因ははっきりとは分かっていません。保護者にしてみれば、泣くのは仕方がないとしても、少しでも泣く時間が短くなってほしいもの。あやし方を高室さんに聞きました。

よく夕方に泣くと言われており、これが「たそがれ泣き」の名前の由来です。高室さんによると、何をしても泣きやまない状態が1週間に3回以上、1回3時間以上続くなどの特徴があります。「早い子は生後2週間から始まります」

生後2カ月ピークに3カ月過ぎると収束

こども家庭庁のガイドブック「赤ちゃんが泣きやまない」によると、親など周囲の関わり方によらず、生後2カ月をピークに泣く時期があり、3カ月を過ぎると収まってきます。

原因については、さまざまな説があると高室さんは言います。▽夜になるにつれ何となく心もとなくなる▽1日の疲れがたまる▽自律神経の調整▽運動が足りず体力が余る―などです。たそがれ泣きは「コリック(疝痛(せんつう))」とも呼ばれ、腸内細菌が関わるおなかの不快感とする説もあります。

たそがれ泣きか確かめるためには、まず他の要因を解消します。▽おなかが空いた▽おむつがぬれた▽眠い▽暑い・寒い▽うるさい、まぶしい―など何かが不快であることなどが考えられます。

また、けがや病気の可能性もあります。次の症状がある時は要注意。受診を検討する必要があります。▽熱がある▽泣き方がいつもと違う▽下痢をしている▽呼吸が荒い▽食欲がない▽吐いた―などです。

このいずれでもなければ、たそがれ泣きだと考えられます。高室さんも経験者の一人です。「第1子が生まれて2カ月たったころ、車に乗せた時に大泣きしたんです。びっくりして車を止め、抱っこしましたが泣きやまない。これがたそがれ泣きの始まりでした」。生後4カ月ぐらいになると落ち着いたそうです。

抱っこして優しく声掛けを

赤ちゃんが泣いたら、保護者は何をすれば良いのでしょうか。高室さんは「抱っこして、落ち着いた声で話しかけて」と言います。「『どうして寝ないの』なんて声掛けは残念なので、『大丈夫だよ』『ママもパパもいるよ』と、自分自身のこともヨシヨシするつもりであやしましょう」

「コリック抱き」という抱き方があります。赤ちゃんをうつぶせにし腕にまたがるようにのせます=写真1=。

「コリック抱き」の説明をする高室典子さん。赤ちゃんをうつぶせにして腕にのせる=写真1=

また、座った状態で赤ちゃんを縦に抱き、手のひらを腹部に当てて少し圧を掛ける=写真2=と、おなかの不快を和らげられるそうです。

手のひらを赤ちゃんの腹部に当てて少し圧をかける=写真2=

背中を丸めて抱く=写真3=のも安心する抱き方です。

赤ちゃんの背中を丸めて抱く=写真3=(いずれも浜本道夫撮影)

このほか心臓の音やビニール袋の摩擦音、ザーッというノイズ(雑音)が赤ちゃんにとって落ち着く音だといいます。あやしながら歌ったり、ドライブや入浴で赤ちゃんの気分を変えたりするのもお勧めです。

激しく揺さぶるのは危険

危険なのは、泣きやまないことにカッとして激しく揺さぶること。赤ちゃんは脳が軟らかくて首の筋肉も弱く、首がムチのようにしなって頭の中に回転力が加わると、脳の神経や周りの血管が引きちぎれます。これを「乳幼児揺さぶられ症候群」といいます。

「泣き声につられて大声を出すと『ファイティングモード』になりやすいので、まずは落ち着いて」と高室さん。ドンドンと激しく背中をたたくのも揺さぶられ症候群と同じ状態になりかねません。「集合住宅だと声が気になり、口を覆ってしまうこともあるかもしれません。危険で、赤ちゃんの尊厳にも関わることです」

赤ちゃんの泣き声を聞き続けるうち、イライラしてどうにもなくなる時はあるでしょう。高室さんは自治体の保健センターや保健所への相談を勧めます。それぞれ保健師や保育士が応じ、連絡先は母子手帳などに記載されています。「たそがれ泣きはいつか終わります。成長の証しでもあるので、いろんな人に頼りながら乗り切って」と、高室さんはエールを送ります。

取材・文/山田芳祥子(北海道新聞記者)

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