連載コラム「あそぶ→そだつ」第30回

【あそぶ→そだつ】手作り花火大会 絆深め

皆さん、この夏花火を見ましたか。1カ月半ほど前に訪れた江別市内の認定こども園年長クラスで、子どもたちが作成した“花火”が盛大に打ち上げられました。

担任保育者に話を聞くと、花火大会の始まりは傘作りがきっかけ。雨が降り続いたある日、5歳児の2人が手作りの傘をさして部屋を散歩していると、そのうちの1人がふと上を見て、「電気に透けると花火みたい!」と気が付きます。「ほら、どーん!」と、2人は傘を花火に見立てて上げ始めました。

翌日も花火遊びは続きます。周りで見ていた子どもたちも「やってみたい」と言い始め、仲間が増えていきました。すると、子どもたちから「花火大会をしたい!」という声が。

花火は折り紙を蛇腹に折ってつなげて作ります。とても奇麗です。他に必要なものを子ども同士で考え、ステージやチラシ作りなど準備が始まりました。「花火は夜だから星をつけようか」、「花火しか見えないように私たちは隠れよう」など、話し合いは子どもたち自身で進めていきます。

お客さんに喜んでもらうためのこだわりの詰まった演出が完成し、当日を迎えました。花火大会はお客さんがいないと始まりません。準備をしてきた10人の花火師たちは、呼び込みを始めます。楽しみにしていた子どもはもちろん、他の好きな遊びをしていた子どもたちも手を止め、27人全員の花火大会になりました。

ある子どもの発見から遊びが広がり、誰に強制されたわけでもなく全員がその場に集まり参加しました。子どもたちで作り上げた達成感や全員で楽しんだ一体感は、クラスの絆を一層深めたことでしょう。この体験は、今後の集団生活での学び合いや社会での助け合いにつながっていくと期待しています。

*「あそぶ→そだつ」は今回で終わります。

教えてくれたひと

増山由香里さん

札幌国際大准教授(発達心理学)

1972年生まれ、岩見沢市出身。岩見沢東高から藤女子短大(当時)へ進み、幼稚園教諭、保育士資格を取得。保育現場で勤務後、北大に編入し、北大大学院に進んで修士課程修了。旭川大学短期大学部准教授などを経て2017年から札幌国際大人文学部准教授。保育現場での出合いから、おもちゃや絵本への関心を深めた。編著に「具材―ごっこ遊びを支える道具」(17年、庭プレス)がある。

2024
5/1
WED

Area

北海道外

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