パパ育休、伸び悩む道内 全国平均下回る3.5%どまり

「パパ育休プロジェクト」実行委員長の清原章生さんは1年間の育児休業を取得。「2人の乳幼児と過ごす大変さは予想以上で、父親と母親がいても休む時間はほとんどなかった」と言う

「パパ育休プロジェクト」実行委員長の清原章生さんは1年間の育児休業を取得。「2人の乳幼児と過ごす大変さは予想以上で、父親と母親がいても休む時間はほとんどなかった」と言う

男性による育児休業の取得が伸び悩んでいる。2018年度の道内男性の取得率は3.5%で全国平均を大きく下回り、国が目標とする「2020年度に13%」の達成にはほど遠い状況だ。育休を取得した男性などが職場で不利益な扱いを受ける「パタニティー(父性)ハラスメント」(パタハラ)も道内で問題となっており、育休取得者が職場で不快な思いをするケースなどが起きている。関係者は「企業側の意識改革が求められている」としている。

転勤、給与減…取得後の嫌がらせなお

育休取得率の全国平均(18年度)は、女性の82.2%に対して男性は6.2%。男性は6年連続で上昇した。一方の道内は、緩やかに増減を繰り返しながら、伸び悩んでいる。道内の取得率が低い要因について、道は「調査をしていないのでわからないが、企業側は男性も取得できるよう取り組む必要がある」(雇用労政課)とする。

道外では今年、化学メーカーのカネカ(東京)やスポーツ用品のアシックス(神戸)などの大手企業で育休を取得した男性が、不利益な扱いを受けたと訴える事例が相次いでいる。カネカの元社員は、育休から復帰後すぐに転勤を命じられ、着任日の延期を希望したが認められず、結局退職。インターネット上では「悪質な嫌がらせだ」など企業側への批判が高まった。

道内でも育休を取得したことで、つらい思いをした男性がいる。空知管内の40代男性は十数年前、2人目の子どもが生まれる時に「子育てにしっかりかかわりたい」と育休取得を希望したところ、上司から「おまえが産むわけじゃないだろう?」と否定的な反応をされたと言う。

社員数が少なく、男性しかできない業務もあったため、育休中も時々出勤し、職場に穴をあけないよう努めた。しかし育休後、給与は3割下がり、周囲の空気も冷たくなったと言う。「当時は『仕方ない』と受け止めたけど、今考えるとパタハラだった」と振り返る。

5年前に育休を数カ月取得した札幌市内の40代男性も、その後年収が十数万円下がったという。「評価を下げられたのが原因です。理由は伝えられなかったが、育休取得以外には考えられない」と納得のいかない表情だ。

育児・介護休業法により、男性も原則として子どもが満1歳になるまで育休を取得することができ、企業側は評価を含めて育休取得者に不利益な扱いをすることが禁じられている。ワーク・ライフバランスコンサルタントの藤村侯仁(きみひと)さん(札幌)は「育休は『取りたい』と言えば『取れるもの』だということを、まず知っておいてほしい」と力を込める。

社員の「マルチ化」で 誰が抜けてもカバー

札幌市内の育休取得者らでつくる「パパ育休プロジェクト」の清原章生実行委員長(34)は、自身も1年間の育休を取得した。「職場の理解があり、育休で家族の信頼関係のベースをつくることができた。親は男女の区別なく、1人の人間として子育てにきちんと関わるべきだと思う」と話す。

パタハラが相次いで表面化している現状について、藤村さんは「育休を取る男性の母数が増加する一方で、社会の変化に企業側の意識が追い付いていないのが要因」と指摘する。

人手の少ない職場で育休の取得希望があった場合、どう対応するか。藤村さんは「中小企業であっても、(採用の工夫などに取り組むことによって)育休から逃げられる時代ではなくなっている」と話す。人員増や業務の効率化、社員同士が助け合う雰囲気づくりに加え、藤村さんは社員の「多能工」化を勧める。

「多能工」化は、1人の社員が複数の仕事をこなしたり、逆に一つの仕事を複数の社員がこなせるようにすること。「誰が抜けてもカバーできるようになり、育休に限らず今後増える介護休業や本人の病気などにも対応できる。強い組織になります」と話している。

取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

この記事に関連するタグ

2024
5/17
FRI

Area

北海道外

その他