夏休み明け増える心身の不調 子どもの話 否定せず聞いて

道内の小中学校はもうすぐ夏休みを終えて2学期を迎える。夏休み明けは不登校や自殺が増える傾向にある。子どもが学校を休みがちになったら、家庭ではどのように対応すればいいのか。北海道教育大札幌校准教授で臨床心理士の齋藤暢一朗さんに、事前の備えや心構えなどのポイントを聞いた。

「学校に行きなさい」逆効果

子どもから「学校に行きたくない」「学校に行けない」と言われたら、保護者が不安を感じるのは当たり前です。でも「なんで行けないの」「行きなさい」と強く言っても逆効果です。基本は「無理に行かせない」「じっくりと向き合う」ことです。

そもそも2学期が始まることは、たいていの子どもにとって「嫌なこと」です。2学期は年度初めと比べ、子どもにとって期待感が少ない。新年度はクラス替えや進学があり、不安と期待が相殺されますが、2学期は期間が長く、勉強も難しくなります。不安や寂しさといった「負の感情」が雪崩のように流れ込んできて心のバランスを崩し、身体が反射的に動かなくなってしまい、不登校になります。

生活リズム整え、焦らず待つ

生活リズムの乱れも大きな要因です。夏休み中は夜型の生活になりがち。特に近年はスマートフォンやオンラインゲームの普及で、寝ている間もインターネットにつなぎっぱなしの子どもが増えています。

学校再開までの間、家庭では生活リズムを整えることをおすすめします。たとえばインターネットを使わない「オフラインタイム」をつくる。ほかにも、家族でゆっくり過ごす時間をつくり、2学期が始まることについての気持ちを聞いてあげてほしいですね。

不登校になる直前でも兆候がないことは結構あります。前日の夜まで行くつもりだったのに朝起きたらおなかが痛くなったり、身動きが取れなくなったり。本人もなぜ行きたくないか自覚しておらず、負の感情を表現できていないことが多いです。だからこそ、普段から負の感情を表現できているか気に掛け、家庭で2学期への不安を聞いてほしいのです。

わが子が実際に学校を休みがちになったら、保護者には正論や説得を一度飲み込んでもらいたい。子どもの感情表現は稚拙だったりしますが、その言葉はあくまで核心ではありません。《1》まずは否定せずに聞く《2》家族以外の人とも関われる時間をつくってあげる《3》焦らずに、午後からの登校や保健室登校からでも一歩ずつ―。この3点を心がけてもらいたい。生活リズムを取り戻すには2週間程度かかりますので、気長に向き合ってほしいですね。

保護者自身も悩むでしょう。祖父母と暮らす家庭は減っているので、相談できる相手が身近におらず孤独になりやすい。気軽にスクールカウンセラーや臨床心理士など専門家に相談してください。まずは保護者だけでもいいんです。

最後にいじめや自殺から子どもを守るためには、より一層子どもに無理をさせないでほしいです。優先すべきは安全でいられる環境です。いじめや嫌がらせに気が付いたら、本人の味方になってあげてください。不登校そのものが悪いことではありません。今年のつまずきを来年に生かせば良いのです。

不登校 10年で2.2倍に 道内

文部科学省が毎年行っている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、全国的に不登校の児童生徒数は増加傾向だ。2020年度に30日以上登校しなかった小中学生は、11年度の1.7倍に当たる19万6127人に上る。

道内も同じ傾向で、20年度は前年度比17.6%増の8873人で、過去最多を更新し、11年度の2.2倍になっている。調査によると不登校の要因は「無気力・不安」が41.7%で最も多く、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が12.9%、「生活のリズムの乱れ、あそび、非行」が11.4%と続いた。

20年度は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う学級・学年閉鎖など、環境がめまぐるしく変化したことで、登校が心理的負担になる子どもが多かったとみられる。本年度も、学年閉鎖などは断続的に起きており、動向を注視する必要がありそうだ。

取材・文/久保耕平(北海道新聞記者)

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