連載コラム「あそぶ→そだつ」第1回

【新連載|あそぶ→そだつ】行動から心の動き探る

子どもたちの遊びは、心や体の発達や成長にどのような影響をもたらし、子どもたちのようすから保護者は何を学ぶことができるのでしょうか。遊びを通した子どもの発達について詳しい増山由香里さん(札幌国際大准教授)が、さまざまな遊びの意味を解説するコラムがスタート。北海道新聞朝刊「子育て面」で毎月第3金曜日に連載します。


数年前に訪れた札幌市内の保育園で1歳半ぐらいの男の子が、木枠に彫られた形にパーツを合わせる「型はめ」の円形パーツで遊んでいました。しかし木枠に合わせることなく、何度も投げては拾っています。何をしたいのか分からず、声を掛けずに見続けていると、パーツが転がることが面白いのだと気付きました。

赤ちゃんは腕や手を動かせるようになると、それまで目で追うだけだったおもちゃに手を伸ばします。手におもちゃが触れて音が鳴ればさらに手を動かし、次は握ろうとします。腕や手を動かすほどに、さらに大きく動かせるようになり、ついに思うようにおもちゃを握ることができます。

子どもは遊びによって、少しずつ身体を自由に使えるようになるほか、自分の周りにいる人や物、空間がどういうものかを認識していきます。遊びは、身体を通じた学びであり、育ちにつながる大切なものです。

遊びは、心の学びと育ちにも貢献します。子どもが「うまくいった」と感じた時、そばにいる大好きな人が喜んでくれると、他者と一緒に喜ぶうれしさを体得します。声を聞いて笑顔を返してくれる人がいれば、自身も人の話に耳を傾けるようになるのです。

うまくいかず悔しい思いをしたり、何度もチャレンジすることは、挑戦や努力につながります。一人で黙々と遊ぶこともある一方で、周りの人を気にすることもあるでしょう。周囲へ関心を持つことは、社会性の獲得をもたらします。

冒頭の男の子には「投げないでここにはめてね」と言ってしまいがちですが、見守り続けることで心の発見につながりました。こうした発見は「困った行動」をとった時の心理の理解にもつながります。遊んでいる子どもの身体や心の動きに注目してみましょう。

教えてくれたひと

増山由香里さん

札幌国際大准教授(発達心理学)

1972年生まれ、岩見沢市出身。岩見沢東高から藤女子短大(当時)へ進み、幼稚園教諭、保育士資格を取得。保育現場で勤務後、北大に編入し、北大大学院に進んで修士課程修了。旭川大学短期大学部准教授などを経て2017年から札幌国際大人文学部准教授。保育現場での出合いから、おもちゃや絵本への関心を深めた。編著に「具材―ごっこ遊びを支える道具」(17年、庭プレス)がある。

2024
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