連載コラム「絵本はママを育ててくれる」第2回

【くだもの】香りも味も、さぁどうぞ

好評につき、何度も行った「くだもの体験」。1歳だった長男遼(はる、左)は毎回大喜びでした(2015年撮影、谷岡さん提供)

香りにうっとり切り口にがぶり ママの仕掛けは大成功

マンゴー、スイカ、パイナップル…南国タイの良いところは、いつでもどこでも、安くておいしい果物が手に入ることでした。

1歳ごろの息子や、タイで親しくなった日本人のママ友の子どもたちは、絵本「くだもの」が大好き。みんなで市場を歩いている時「読み聞かせをしながら、果物を切って見せたらどうだろう」と思いつきました。

子どもとママが3人ずつ集まったある日。布をかけて隠しておいた果物を、本の陰から登場させると…! 子どもたちの目が、ぱあっと輝きました。小さな手が次々出てきてリンゴの丸さを確かめたり、ぶどうの水滴に触れてびっくりしたり、イチゴにかぶりついたり。触って、かいで、かじって、感覚を惜しみなく開き、夢中になっています。

私がこんなふうにじっくり何かを観察したのは、いつだったろう? 新しい発見の喜びを、かつて私たち大人も味わったのです。

最後に、大きなスイカをぱかっと切ってみせました。真っ赤な果肉が現れると、子どもたちはカブトムシみたいに吸いつきます。顔も服も手も、汁でべたべたにしながら食べたスイカは、どんなにおいしかったことでしょう。

今回登場した絵本

「くだもの」

「くだもの」
平山和子・作 福音館書店

画面いっぱいの果物はみずみずしく、香りが漂ってきそう。一つ一つを指しながら「もも」「いちご」と教えれば、物には名前があることが分かるようになります。わが家の1冊には、あちこちに果物の汁がとんでいます。

谷岡 碧

2007年にテレビ東京へ入社、記者として秋葉原連続殺傷事件や東日本大震災の被災地を取材。12年に退社、チェンマイへ移住しNGOスタッフとして勤務。その後退職し17年に札幌へ帰郷、幼なじみのピアニストとユニット「enets」(エネッツ)を立ち上げ、絵本の読み聞かせとピアノ演奏によるコンサートを続けている。長男(4)と18年4月生まれの長女を育てる母として奮闘中。札幌市出身。

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