水辺の危険アプリで学ぶ 日赤など6団体が公開

海での危険な場所や行為をチェックするテスト

道内に適用されていた新型コロナウイルス対応のまん延防止等重点措置が11日で解除され、海や川に出かける人もいるでしょう。ただ、6月には札幌市南区の定山渓ダムで水遊び中の小2男児が溺れて亡くなっており、水の事故に万全の備えが必要です。水難防止に取り組む6団体は同月、子どもが授業や家庭で水辺の危険を学べる無料アプリケーションを公開しました。内容を紹介します。

海や川での行動 アニメやクイズで親しみやすく

6団体は日本赤十字社、河川財団、水難学会、日本水難救済会、NPO法人川に学ぶ体験活動協議会、ブルーシー・アンド・グリーンランド財団(B&G財団)。アプリはB&G財団のサイト=https://www.bgf.or.jp/safetyprogram/app/=でダウンロードできます。

アプリは「水の事故を知る」「海での行動」「川での行動」「水に落ちたら」など七つのテーマに分け、計119ページ。安全知識は「冷たい水に長くつかると体温が下がり、命の危険もある」(水の事故を知る)、「海の潮が満ちると、陸だった所に水が来るかもしれない」(海での行動)、「山で大雨が降ると川が増水する。急に水が茶色く濁ったら避難する」(川での行動)などと記しました。

水辺の安全学習アプリのうち、川の急な増水の危険を伝えるページ

水辺の安全学習アプリのうち、川の急な増水の危険を伝えるページ

「水に落ちたら」のテーマでは「溺れる時は音もなくスーッと沈む。水面上に浮くのは体の2%だけで、声を出したり、手を上げたりしたら沈む」と説明。落ち着いて力を抜くと服の間の空気や靴の浮力で自然に体が浮くとし、長く浮いていられる姿勢である「背浮き」について「息を吸い込んであおむけに浮かび、鼻と口が水面の上に出るようにする」と解説しています。

テーマの理解度を確かめるための○×クイズや、海や川などで危険な場所と行為をチェックするテストも用意。「行動シミュレーション」では、水の事故が起きた時の救急通報や、ライフジャケットを身につける順番について、答えを選びながら学べる仕組みです。

川の安全知識を問う○×クイズの一つ

川の安全知識を問う○×クイズの一つ

B&G財団は全国の教育委員会や小学校に授業でのアプリ活用を案内する文書を送り、7月6日現在で全国210校が導入を検討中といいます。同財団の担当者は「コロナの影響で学校での水泳の授業が制限され、子どもたちが水辺の安全を学ぶ機会が減っています。アプリはアニメーションを多く使い、親しみを持てるよう工夫しました」と話します。

アプリ監修者の一人で鳴門教育大(徳島県鳴門市)の松井敦典教授(水泳教育)は「水難を防ぐための安全知識を補える有力な材料。クイズ形式で理解が深まるし、大人にも発見があるでしょう。学校のプールと違い、川や海では足が底につかない場合があることを(アプリを通し)イメージできるのではないでしょうか」としています。

命を守るポイント

海や川で命を守るために気を付けるべきポイントを、道内の専門家に聞きました。

第1管区海上保安本部(小樽市)安全対策課長 堤憲一郎さん
「監視員常駐の海水浴場へ」

昨年、道内で遊泳中に事故に遭った人は16人いました。前年の1人から大幅に増え、うち3人が亡くなっています。16人中7人はコロナの影響で開設を見送った海水浴場で事故に遭い、小学生も2人いました。7人とも救助されました。

海には目に見えない流れや深みがあり危険です。海岸から沖に向かって速く流れる「離岸流」に巻き込まれたり、水深が突然深くなって立てなくなったりします。監視員が常駐している海水浴場で泳ぎ、小学生以下は大人と一緒に行ってください。今年も開設を見送った海水浴場があるので、事前に調べましょう。

NPO法人まち・川づくりサポートセンター(滝川市)

事務局長 森井智江さん
「ライフジャケット正しく」

道内の川は山の雪解けでも水が増えるので注意が必要です。遊ぶ前に、あそこは深そう、ここは足が滑りそうなど、親子で危険を予測し川を知りましょう。

川に落ちた場合、護岸されているとよじ登りにくく、草が生えていない土はもろく崩れやすいです。川底には深みもあります。命を守るにはライフジャケットの正しい着用が一番大事です。

溺れている人がいても安易に助けに行くと、しがみつかれて溺れる可能性があります。浮かび続けられるよう浮輪や、ひもを結んだ容量2リットルの空のペットボトルを投げ入れ、救助隊の到着まで励ましてください。

取材・文/町田誠(北海道新聞編集委員)

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