増えるケガ「子どものロコモ心配」 コロナ禍で運動不足

(写真はイメージ=PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛などで、体を動かす機会が減り、子どもの運動機能の低下が懸念されています。子どもの「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」と呼ばれ、ケガにつながる事例も出ているようです。専門家は「毎日少しでも体を動かす時間を設けて」と呼びかけています。

外出自粛で屋外遊び減少

ロコモは、体を動かすのに必要な骨や関節、筋肉などの運動器が衰えている状態をいいます。進行すると要介護や寝たきりにつながるため、高齢者の問題と考えられてきました。

しかし、最近はゲームの普及や屋外の遊び場の減少などによる運動不足から、体を動かす基本動作ができない「子どものロコモ」も指摘されています。体のバランスや柔軟性、反射神経の低下により、「朝礼で立っていられない」「転んだ時、手をつけずに顔を打ってしまう」「ボールをうまくキャッチできず、顔に当ててしまう」などの子どもが増えているようです。

札幌市北区の女性(39)は小学2年生の息子が段差のないところでつまずく姿をよく目にします。「休校明けは特につまずきやすかった気がします」。5月までの休校期間中は自宅でDVD鑑賞やスマホ動画を見る時間が増え、外で遊ぶ時間が減りました。7月に入り、友人と鬼ごっこしている最中に足をひねり、軽い捻挫をしたといいます。女性は「冬は体をより動かさなくなるので、ますます体力が落ちるのでは」と心配しています。

「毎日少しでも体動かして」

札幌医大病院整形外科の射場(いば)浩介准教授は「休校明けから、ちょっとした動作で骨折などのケガをする子どもの受診が増えたと全国で報告があがっています。休校による運動不足の後、急に運動量が増えたことが原因と考えられます」と指摘します。「子どものロコモはもともと問題視されていましたが、コロナ禍による影響で、さらに深刻化する可能性があります」と懸念しています。

日本臨床整形外科学会が7月下旬~8月中旬、医療機関を受診した約1万2千人に外出自粛の影響を調査したところ、小中高校生約800人のうち45%が「体力がなくなった」、31%が「疲れやすくなった」と回答しました。自粛後に体の痛い部分として小学生は足と足の関節、中高生は首や腰が多くなりました。「自粛中1日3時間以上スマホやゲームに費やした」と回答した小学生は20%、中学生は34%、高校生は43%いました。

子どものロコモ 5つのチェック

整形外科医らでつくるNPO法人全国ストップ・ザ・ロコモ協議会(東京)は子どもロコモかどうかを自分で調べられるチェック表(図上)をホームページなどで公表しています。一つでもできない項目があれば、子どもロコモの疑いがあり注意が必要です。子どもロコモの改善方法として、自宅でも気軽にできる体操(図下)などもホームページで紹介しています(https://sloc.or.jp/)。

親子でできる改善法

スポーツ庁も運動不足への対策「子供の運動あそび応援サイト」を設けています。

射場准教授は「手押し相撲や手押し車など、家族や友達との遊びの中に運動を取り入れると楽しみながら続けられます。朝のラジオ体操でもいいので、積極的に体を動かすよう心がけましょう」と話しています。

・手押し相撲
互いに向き合い、手のひらを押し合ったり、引いたりして、足を一歩でも動かした方が負け(体のバランス感覚を鍛える)
・手押し車
四つんばいになり、もう一人に両足首を持ち上げてもらい、手だけで前に進む(腕の力を鍛える)

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

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