幼児教育・保育無償化、確認を

(写真はイメージ=PIXTA)

来春、幼稚園や保育所への入園を考えている保護者にとって、昨年10月にスタートした幼児教育・保育の無償化は家計への影響を考える上で重要な関心事の一つです。無償となる対象や手続きの有無などをあらためてチェックしておきます。


無償化は、幼稚園や認可保育所、認定こども園のほか、認可外施設や病後児デイサービス、幼稚園預かり保育に適用されます。利用料が無料になったり、減額されたりします。財源は、10%に引き上げた消費税の増税分を充てます。政府は2020年度当初予算で3410億円を計上しました。

幼児教育・保育の無償化の対象早見表

無償化の対象は原則、子どもの年齢(4月1日時点の「クラス年齢」)が0~2歳、3~5歳で異なります。

3~5歳の場合、認可保育所や認定こども園への通園、さらに小規模保育をはじめとする地域型保育事業、幼稚園のうち子ども・子育て支援新制度に移行した園は無料となります。幼稚園のうち、新制度に移行せず私学助成を受けて運営している私立園は月2万5700円を上限に補助されます。

認可外施設なども就労や疾病、障害、介護など「保育が必要」とされるケースに該当すれば、月3万7千円を上限に補助されます。ただし、幼稚園預かり保育は月1万1300円が上限となります。

一方、0~2歳は「保育が必要」とされるケースでかつ、所得が低く住民税非課税の世帯であれば、3歳以上と同様に、無料または減額となります。ただし、認可外施設・サービスの補助上限は月4万2千円で、幼稚園預かり保育は上限1万6300円となります。

無償化の対象施設・サービス

無償化になるのは原則として対象施設・サービスの基本利用料。給食やバスによる送迎、遠足など行事の費用は保護者の負担となります。

例外として、年収360万円未満の世帯と第3子以降は給食費のうち副食費(おかず代)が免除されます。ただし、市町村によっては副食費の全額または一部を、所得条件を付けるなどして補助しています。

申請は大半で不要ですが、認可外施設・サービスの利用や一時預かり、病後児デイサービスを利用する場合は、市町村に申請する必要があります。また、私学助成を受けている幼稚園や幼稚園預かり保育を利用する場合は、園を通して申請しなければなりません。

保育士確保が必要 秋川教授に聞く

幼児教育・保育無償化の現在の問題点と今後の展望について、保育制度に詳しい関西福祉大の秋川陽一教授(64)に聞きました。

秋川陽一教授

秋川陽一教授

昨年秋に始まった現行制度では、0~2歳児に対する無償化が住民税非課税世帯に限られました。低年齢児が多いと保育士も多数確保しなければならないという理由があるでしょうが、本来は保育ニーズが高い層への対応が薄くなったと言えます。

そもそも、保育士不足が解消されていない状況で無償化すれば、保育を望む人が多く出てくるのは必然でした。預けたくても預けられない人が、無償化の恩恵を受けられない現状は、問題があると断じざるをえません。

保護者の立場からすれば、家計の負担を軽減する無償化が最も気になることは理解できます。しかし、保育士の確保により、保育を必要とする子ども全てに保育機会を確保して待機児童を解消し、同時に保育の質を高めることにも財源を振り向けていく必要があるでしょう。

取材・文/弓場敬夫(北海道新聞編集委員)

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