• 親子の異変見逃さない 札幌市が対応強化 自宅訪問や安否情報共有

    6月から乳幼児健診を再開した札幌市北保健センターで、診察室内をアルコール消毒する職員
    新型コロナウイルス感染への不安などから乳幼児健診を受診せず、孤立する親子が道内で出ている。健診は、深刻な育児不安や虐待など家庭内の異変に気付く重要な機会でもある。昨年6月、2歳の女児が衰弱死する事件のあった札幌市は、健診時に異変に気付きながら命を救えなかった教訓から、未受診児の情報共有や自宅訪問など対応を強化。専門家は「安否確認にとどまらず、親を支援する意識が重要」と指摘する。

    乳幼児健診 増える未受診

    「感染が怖くて健診に行けない」。札幌市内の子育て支援団体には、健診対象の子どもがいるものの自宅に引きこもる母親から、こんな相談が寄せられたという。シングルマザーが新型コロナの影響で仕事を失い、健診会場への交通費を払えないため、未受診が続いているケースもあった。支援団体は「育児不安を一人で抱え込む親への支援を急ぐ必要がある」と危惧する。

    母子保健法では1歳半と3歳で健診を義務付け、4カ月や10カ月などを対象にする自治体もある。同法に基づく健診では、虐待の予防や早期発見に留意が必要と定められている。

    独自に保健所を設置する札幌・旭川・函館・小樽4市を除く道内の2018年度の受診率は1歳半が97.4%、3歳が97.1%。未受診児は1歳半で433人、3歳で522人いた。道央の保健師は「親の病気や、仕事の都合による一時的な未受診の場合、調整すれば受診してもらえるが、連絡のつかない心配なケースは少なからずある」という。

    札幌市の19年度の受診率は1歳半が94.3%、3歳が91.8%と、いずれも過去5年で最低だった。新型コロナの影響で3月5~31日に健診を休止したのが要因で、6月に再開されるまで断続的な休止を挟んだこともあり、約9千人が受診できていない。各区の保健センターは消毒を徹底し、フル稼働で健診を実施。北区の北保健センターの担当者は「電話で連絡が付かず、直接訪問で母親に会った結果、ひとり親で育児に悩んでいたと分かり、支援につながったケースもある」と話す。

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    東京都大田区で6月、3歳の女児が自宅に放置され、衰弱死した事件も、未受診だった。区は自宅訪問したが親子に会えなかった。

    札幌市の2歳女児衰弱死事件では1歳半健診で著しい成長不良とされ、医療機関での精密検査を求められたが、母親は受診させず、保健師も接触しなかった。

    事件を受け、札幌市は昨年11月に乳幼児健診マニュアルを改定。連絡の付かない未受診家庭への訪問や、病院・保育所との情報共有で必ず安否確認すると決めた。未受診児の状況を把握できない場合、部署内で会議を開き、管理職を中心に対策を講じるよう改めた。

    札幌の事件を検証した有識者会議の委員で、武蔵野大の中板育美教授(母子保健)は「健診は必要に迫られて行くものでないため、親の受診動機は高くない。特に未受診児の親と接触する場合、子どもの安否確認から入らず、産後の体調を気遣うなど親をケアする視点が重要」と指摘。保健師らの研修を充実するよう求めている。(下山竜良、山岡正和)

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