巣ごもり 食の大切さ学ぼう 札幌の食育専門家に聞く

(写真はイメージ=PhotoAC)

新型コロナウイルスの感染拡大で休校が続いていた道内の学校も、ようやく再開に向けてめどが見えてきました。ただ、事態が収束するまでは、以前よりも家庭で過ごす時間が多くなりそうです。まだ続く巣ごもりを機に、親子で食の大切さを確認するきっかけにしてはどうでしょう。札幌市内の食育の専門家2人にアドバイスしてもらいました。

1品の調理を任せて

和田順子さん

食育教室を開いている和田順子さん(39)のお勧めは、子どもの成長に合わせた料理づくりのお手伝い。「ゆで卵やサラダなど簡単な料理でいいので、1品の調理をすべて任せると、子どもはがぜんやる気を出す」と説明します。

「『材料を切って』などと調理の一部のお手伝いだと、子どもは達成感を感じづらい。例えばサラダだったら野菜をちぎって盛り付けて、ドレッシングをかけて完成。やり遂げたという自信がついて料理が楽しくなる」といいます。

和田さんは、家庭でもてあました食品を持ち寄り料理する「サルベージ・パーティ」も開催しています。保護者同伴で小学生の参加もあり「自分のアイデアで自由に料理してもらうため、生き生きと取り組むし、できた料理は残さずおいしそうに食べる」と振り返ります。

小学生6年生と3年生の男の子の母親である和田さんは、2月の休校を機に昼食づくりを2人に任せました。普段の手伝いで包丁や火の使い方に慣れていて「休校で時間の余裕が生まれたのを前向きに捉えて、子どもが料理の楽しさを感じるチャンスだと思った」と狙いを話します。

基本的な料理のレシピ本を渡して、家にある食材を見ながら2人で献立を決めます。和田さんは、調味料の分量などが明らかに間違っている以外は口を出しません。「分からないことをインターネットで調べたり、うまく分業したりして作業を進めている」といいます。 昼食は親子3人で一緒に食べ、「『おいしいね。ママ助かっちゃった』などと子どもたちを心からほめるようにしている」と和田さん。昼食づくりを通じて「段取りの力が付き、朝夕の料理をしている私に感謝をしてくれることが多くなった」とわが子の成長を実感しています。

好き嫌いなくす好機

山際睦子さん

管理栄養士で札幌保健医療大非常勤講師の山際睦子さん(75)は、「子どもの好き嫌いをなくすいい機会と考えてみては」と提案します。子どもに無理強いすることなく、克服する方法が三つあるといいます。

一つは、同じ食材でも調理法を変えてみること。「和食でだめだったら、洋風や中華、イタリアンと試してみる。私の孫はホウレンソウのおひたしが苦手でしたが、バター炒めにしてみたら食べられるようになりました」

二つ目は、親や周りの大人が笑顔でおいしそうに食べること。「食事中に『とてもおいしいな』『体にとてもいいんだよ』と会話をしながら食べる。つられて少しでも口に入れたら、ほめてあげてほしい」と強調します。

三つ目は、できれば嫌いな食材を家庭菜園やプランターなどで一緒に育ててみること。「自分で育てると興味を持つし、取れたての新鮮な野菜は甘さがあるので、おいしく感じる」といいます。旬の時季にスーパーなどで購入するのもいいですね。

「嫌いな食材を食卓に上げなくなると、栄養が偏った食生活につながる」と山際さん。「嫌いだけど体には必要なんだという意識が植え付けられるだけでも、大人になって食事に気をつけるようになる」と助言します。

取材・文/安宅秀之(北海道新聞編集委員)

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