広がる食物アレルギー対応 道内の飲食店

びっくりドンキーの「乳・小麦・卵を使わないハンバーグ」(手前)。定番商品のレギュラーバーグディッシュ(奥)と見た目も味もほぼ同じだ

びっくりドンキーの「乳・小麦・卵を使わないハンバーグ」(手前)。定番商品のレギュラーバーグディッシュ(奥)と見た目も味もほぼ同じだ

食物アレルギーを抱える子供たちの割合が増える中、道内飲食店で、アレルギーを引き起こす可能性のある食材を使わないメニューを用意するなどの対応が広がっています。これから卒業や入学など子供の節目を家族で祝う機会が増える時季を迎えます。保護者らは「外食先の選択肢が増えた」と歓迎しています。

「乳・小麦・卵」使わぬハンバーグ…コース料理や定食、懐石も登場

「『乳・小麦・卵を使わないハンバーグ』でございます」。札幌市のハンバーグレストラン「びっくりドンキー」白石中央店のスタッフが、木皿に載ったハンバーグをテーブルに差し出しました。食物アレルギーに配慮した商品ですが、見た目と味は定番商品のレギュラーバーグディッシュとほぼ同じ。

皿の下には、商品名が書かれたマット。皿には、商品名を記した長さ8センチほどの木札が立ちます。スタッフや客が、通常のハンバーグと間違わないための工夫です。

びっくりドンキーを展開する外食チェーン「アレフ」(札幌)が2017年に発売。ハンバーグはパン粉の代わりに米粉を、卵の代わりに植物性タンパクを使い、肉はあえて味付けを薄くし本来のうま味を引き出しました。ソースは、小麦を使わないしょうゆベースです。

ハンバーグは、レギュラーバーグディッシュ(150グラム)よりやや小さい130グラムですがコストは1.5倍。価格は同じ679円(道内)に抑え、道内全41店を含む全国270店で販売しています。昨年12月に、インターネット通販や道内一部百貨店で、レトルトパックの販売も始めました。

認証制度導入

3年がかりの商品開発を担当した営業企画部の小沢友裕さん(43)は「アレルギーの人にも、同じ味を提供しようと試行錯誤した。予想より大人からの注文が多く、『初めて外食できた』と礼状が届くこともある」と手応えを示します。同社は、食物アレルギーについて自社の通信教育を受けると、専門知識のあるスタッフに認定する認証制度も設けています。

牛乳や卵などにアレルギーのある小学3年の女児の母親(45)=札幌市=は「数年前まで家族で外食する時はいつも娘用の弁当を持参したが、最近は手ぶらで行ける店が増えた」と喜びます。

JRタワーホテル日航札幌は15年から、レストランでアレルギー対応のランチ、定食、コース料理や懐石料理も提供します。利用は本年度で計約20件と多くはありませんが、同ホテルは「幅広い層を平等に迎えるには必要な対応」と力を入れます。道内に店舗を持つアレフ以外の外食チェーンも、ファミリーレストランのロイヤルホスト、ココスなどが対応しています=表=。

食物アレルギーに対応する主な外食チェーン店

大豆の代用も

個人経営の飲食店も食物アレルギーに配慮する店が増えています。札幌市西区のレストラン「洋食家 はるひ」には、パン粉や卵を使わず、豆乳の生クリームや大豆ミートを入れたハンバーグがあります。卵と小麦が食べられない幼児の来店がきっかけだったといいます。

だが、アレルギー対応を掲げた料理でも、調理の過程で器具などを介してアレルギーの原因となる食材が混入する可能性はあります。アレルギーの子供の保護者らの会「食物アレルギーの会北海道とれふる」(札幌)によると、食べる子供の症状によっては、保護者が店に調理状況の詳細を確認しなければならないこともあるといいます。

とれふるは「アレルギー対応をうたう店には疑問を尋ねやすく、安心して外食できることにつながる」と今後の広がりを期待します。

日本アレルギー学会指導医の伊藤浩明・あいち小児保健医療総合センター副センター長(愛知)は、飲食店の食物アレルギー対応を拡充するには「店がアレルギーの正しい知識を学び、安全な原材料の流通経路が確保されることが大切」とし、「研修の場や関連情報を提供し、食物アレルギー対策のオピニオンリーダーとなれる地域ぐるみの組織が必要」と指摘します。

中高生 10人に1人 アレルギー 園児、小学生も過去最高 道教委調査

道教委が2017年度に幼児から高校生までを対象に行った調査では、食物アレルギーのある人の割合は中学生が最も高く10.9%、次いで高校生が10.2%となり、10人に1人が食物アレルギーを抱える状態でした。

調査は、05年から3年に1度行われ、過去5回の調査で、食物アレルギーの人の割合が1割を超えたのは初めて。

幼稚園児は5.9%、小学生は8.9%。いずれも増加傾向で過去最高だった=グラフ=。

取材・文/佐竹直子(北海道新聞記者)

食物アレルギー

特定の食べ物を食べた後に、皮膚、呼吸器、消化器などが過敏な反応を起こすこと。ほとんどは、食べ物に含まれるタンパク質が原因で起こる。症状は、湿疹、下痢、せき、呼吸困難、嘔吐(おうと)など。重症になると命にかかわるアナフィラキシーショックにつながる危険性がある。原因となる食品は、鶏卵、牛乳、小麦が多く、そのほか大豆、ピーナツ、果物、魚卵などさまざま。予防と治療の原則は「原因となる食物を摂取しないこと」とされている。乳幼児期に発症すると成長とともに症状が軽減することが多いが、成人後も症状が続いたり、成人後に発症したりするケースもある。

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