夏休み明け「学校行きたくない」どうする 休んでもいいんだよ

道内の小中高校の多くで夏休みが終わり、2学期が始まった。久しぶりの再会を楽しむ子がいる一方、学校に不安や悩みを抱える子にとっては、つらい時期でもある。「学校に行きたくない」と感じた時はどうすればよいのか。専門家は「無理せず、『休む』という選択肢もあることを知って。周囲は焦らず、その子に寄り添ってほしい」と呼びかけている。

焦らずその子に寄り添って/無理強いは禁物

「学校が嫌だ」「つらい」―。NPO法人「全国不登校新聞社」(東京)の石井志昂編集長(37)のもとには8月中旬からそんな悩みや相談が寄せられている。石井さんは「学校に行けなくても、人生は終わりじゃない。子どもたちには『大丈夫、休んでいいんだよ』と言いたい」と話す。

自らも不登校の経験を持つ石井さんは、これまで多くの不登校の子どもや親を取材してきた。そうした経験から夏休み後に子どもに異変が起こることが多いと指摘する。ただ、親を悲しませるのではとの思いから「休みたい」と言い出せない子どもも少なくない。

子どもによっては頭痛や腹痛、食欲がなくなったり、体や表情に異変が出てくるケースもある。「こうした異変が出た時はもう限界の状態。親に『もう少し頑張ろう』と言われると絶望してしまう」と石井さん。「学校に行けない現状や、これからのことについて、親も不安だろうが、本人こそ深く悩み、不安でいる」とし、大人には温かく見守るよう呼びかける。

23日からはホームページ(http://www.futoko.org/)で、不登校経験者によるメッセージを掲載する。

傾聴を心がけて

「わが子から『学校に行きたくない』と言われたら驚きますよね。でも、まずは焦らず、落ち着くこと」と、不登校の問題に詳しい道教大札幌校の平野直己教授(53)=臨床心理学=はアドバイスする。

つい大人は「勉強が遅れるのでは」「この先の人生に影響しないか」などと不安になり、無理に行かせようとしてしまいがちだ。だが「『行かせるか、休ませるか』の二者択一ではなく、『いま、どんな気持ちなのかな?』と声をかけ、子どもの気持ちに耳を傾けてほしい」という。

学校に行きたくない理由は、いじめとは限らない。「クラスの子とコミュニケーションがうまく取れない」「勉強が嫌い」などさまざまだが、少し休めば解決する子もいる。「親が受け止めてくれたとわかると、子どもはとても安心する」と平野教授。

選択肢いろいろ

逆に、学校に行きたがらない子どもに「学校に行かずにどうするの」「他の子は行けているのに」など責めるような言葉を掛けるのは、子どもをさらに不安にさせるため避けたい。平野教授は「学校に行かなくても大人になる道はある。長い人生から見れば、不登校はつまずきの一つでしかない。親も周りももう少し楽に考えていい」。休みが長く続く場合、1人で抱え込まず、学校やスクールカウンセラーなど専門機関に相談することを勧める。

フリースクールなどの選択肢を知っておくことも大切だ。小中学生向けのフリースクール「札幌自由が丘学園」は19日、「学校に行くのがつらいと感じている人へ届けたい」とホームページ(http://www.sapporo-jg.com/free-school/)にメッセージを掲載した。同学園は、道内のフリースクールが加盟する「北海道フリースクール等ネットワーク」の事務局も務めており、「学校以外にも選択肢はさまざまある。相談してほしい」と話す。30日午後1時半からは同学園の無料開放も行う。問い合わせは同学園(電)011・743・1267へ。

見守りの強化を

内閣府が2015年にまとめた白書では、13年までの42年間に自ら命を絶った子ども(18歳以下)は約1万8千人で、本州の多くの学校で新学期が始まる9月1日が最も多かった。その日をはさんだ9日間では700人以上が命を絶っており、白書では、子どもたちにとって長期休み後は「大きなプレッシャーや精神的動揺が生じやすい」とし、「見守りの強化が効果的」と指摘している。

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

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