ぐずる子どもへの処方箋 チャイルドシート、楽しさ伝えて
小さい子どもと車で外出する時にチャイルドシートは必須ですが、身体が拘束されることなどを嫌って、ぐずる子も少なくありません。スムーズに乗せて、なおかつ、機嫌良くいてもらうためのコツはあるのでしょうか。最近のチャイルドシート事情も併せて調べてみました。
車内にお気に入りの玩具/暑さ寒さにも注意
札幌市中央区の女性会社員(40)は、2歳長男のチャイルドシート嫌いに頭を悩ませています。体をのけぞらせて抵抗するほどで、ポータブルDVDプレーヤーでアニメを見せたり、菓子を与えたりしていますが、チャイルドシートに乗せて車を発進させるまでが一苦労です。また、出発後も、チャイルドシートから抜け出そうと手足を動かし続けます。女性は「乗せるのも、乗せたまま落ち着かせるのも至難の業」とため息をつきました。
なぜ、ぐずるのでしょうか。名寄市立大教授で育児相談も行う笹木葉子さん=母性看護学=は「楽しく遊んでいるなどの状況が一変、いわば保護者の都合で拘束されるので嫌がるのも当然です」と説明します。
車内環境が一因との声もあります。アカチャンホンポ新さっぽろアークシティ店(札幌市厚別区)でチャイルドシートコーナーを担当する太田紀子さんは「窓越しに直射日光を浴びたり、屋外に止めていた車にエアコンが効く前に乗せてしまうなど、暑さや寒さを感じることも要因になります」と話してくれました。
笹木さんに、ぐずらせないために保護者が試してみるといいこと=図=を教えてもらいました。まずは、乗せる前に『お買い物に行くから、お座りしようね』などと楽しいイメージが伝わるように言葉をかけるようにします。そのとき、遊びに夢中の状態なら待ちましょう。遊びが一段落したら、声を掛けて乗せるようにします。車内には、チャイルドシートに乗った時だけ遊べるお気に入りのおもちゃを用意しておくと良いでしょう。ベルトを装着する時は、楽しい歌を歌って盛り上げましょう。
「無理やりベルトを着けるとトラウマになり、(乗るたびに)ぐずってしまうことになる。『車で移動するのは楽しい』という雰囲気をつくるよう意識しましょう」と笹木さんは付け加えました。
祖父母世代には、チャイルドシートの操作にてこずったために子どもがぐずったという経験を持つ人もいることでしょう。その点、今の製品は、乗せやすさや子どもの快適性が改善されています。
アカチャンホンポ新さっぽろアークシティ店のチャイルドシートコーナーを訪ねました。子どもを乗せやすいように着座部分が回転するものや、着座部分を取り外せるものもあります。脱着タイプだと、あらかじめ子どもを着座部分に乗せて、車に運び込むことができます。
子どもに太陽光が当たるのを防ぐシェード付きが多いことにも気付かされます。体に触れずにベルトの長さを調節できたり、おもちゃをつり下げるところがあって乗りながら遊べる―などの製品もあります。メーカー各社は、子どもがぐずって手足をどれほど動かしても、ベルトが外れない仕組みを採用しています。
チャイルドシート大手「コンビ」(東京)経営企画室の川崎愛さんは「日差しが強い時期、(車に乗らない時は)着座部分を家の中に置いておくといいです」と話してくれました。熱いシートに乗せないためです。
ただ、熱くなっているからといって、シートと子どもの間に保冷剤を置いたり、汗をかいて気持ち悪くならないようにタオルを挟んだりすることについては、「安全性能が発揮できないこともありうるので避けてください」と川崎さんは注意を促します。
春の遅い北海道も、ようやくドライブシーズンに入りました。チャイルドシートを正しく使い、子どもと一緒に、笑顔で、安全な車での移動を楽しみましょう。
取材・文/弓場敬夫(北海道新聞くらし報道部編集委員)
チャイルドシート使用の義務
道路交通法に基づき、疾病などやむをえない事情がない場合を除いて、6歳未満の子どもはチャイルドシートを使用しなければならない。6歳以上は法的義務はないが、安全のため子どもに適合したチャイルドシートを使用が求められる。警察庁の2017~21年の統計によると、チャイルドシートを適正に使用していなかった6歳未満児の交通事故での死亡率は、適正に使用していた場合に比べて約5.3倍高かった。
この記事に関連するタグ
What’s New
- 子育て・教育
- ALL
Editor's pick up
Ranking
- すべて
- 子育て・教育