北海道は患者数が多い傾向 「3大夏風邪」にご用心!

「油断していたら夏風邪引いちゃった」なんて話、よく聞きますよね。気温も湿度も高い夏、5歳以下の子どもを中心に流行する風邪があります。中でも、特に多く見られる手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱(咽頭結膜熱)の3つは、「3大夏風邪」と呼ばれ、6月から9月にかけて流行。まさにこの時期、注意が必要です。そこで、西岡こどもクリニック(札幌市豊平区)院長の上辻教幸先生にお話を聞きました。

3つの風邪の特徴を知ろう

3大夏風邪は、毎年6月くらいから患者が出始め、7、8月にピークを迎え、9月ごろまで続きます。昨年、道内ではプール熱や手足口病が大流行し、患者数は全国平均を大きく上回りました。

北海道感染症情報センターが発表しているデータによると、今年の道内患者数は昨年を下回るものの全国平均より高め。手足口病は7月末の時点で浦河、札幌、小樽の保健所管内で高いレベルが続いていて、今年も注意が必要そうです。

咽頭結膜熱 ― 北海道の推移グラフ

咽頭結膜熱 北海道の推移(※北海道感染症情報センターHPより)

手足口病 ― 北海道の推移グラフ

手足口病 北海道の推移(※北海道感染症情報センターHPより)

では、3大夏風邪それぞれの特徴を見ていきましょう。

手足口病

名前の通り手と足、口の中の粘膜に水疱状の発疹ができる急性ウイルス感染症。多くは4歳以下の子どもに発症し、その内の半数は2歳以下といわれていますが、小学生や大人でも発症することがあり、特に大人の場合は重症化することがあります。

発疹は水疱瘡にも似ていますが、水疱瘡の水疱は円形なのに対し、手足口病の水疱は楕円形。発疹部分にピリピリとした刺激があり、口の中の発疹は食べたり飲んだりすると痛むため、食欲不振になることがあります。多くの場合、発熱は38度以下。発疹は5、6日経つと落ち着き、色素沈着が見られます。ごくまれに、急性髄膜炎や急性脳炎などの重い合併症を引き起こすケースがあります。

ヘルパンギーナ

のどの痛みと38度以上の高熱を伴う急性ウイルス感染症。のどの痛みの原因は、口蓋垂(こうがいすい / 俗称「のどちんこ」)の周りにいくつもできる水疱状の発疹。手足口病と似ていますが、こちらは発疹が口の中だけに限られ、熱も高め。発症から3、4日で落ち着きますが、喉が痛いために食べるのを嫌がるのも特徴です。

プール熱

正式名称は咽頭結膜熱。数種のアデノウイルスが原因となる急性ウイルス感染症で、プールの水を介して感染することが多いため、プール熱と呼ばれるようになりました。3大夏風邪の中で最も熱が高くなり、喉の奥が赤く腫れて痛みを伴う扁桃炎や目が充血する結膜炎、倦怠感や食欲不振が主な症状です。これらの症状が落ち着くまでに3~6日かかります。

特効薬はなし、治療は対症療法が中心

3大夏風邪に共通しているのは、特効薬がないこと。そのため、それぞれの症状に応じて対症療法が用いられます。

手足口病なら発疹部分への塗り薬、ヘルパンギーナは解熱剤や鎮痛剤、プール熱でも解熱剤や点眼薬を使用する程度です。あとは、症状が落ち着くまで様子を見るしかありません。いずれの場合も発熱でぐったりしたり、食欲が落ちたりすることが多く、脱水症が心配されます。水分補給には十分気をつけてあげてください。

1歳以下の赤ちゃんでどうしても水分補給がうまくいかない場合は入院して点滴するという処置を行う場合もあります。熱い物、しょっぱい物など刺激のある食べ物を避け、おかゆやプリンなど飲み込みやすい物を与えてあげましょう。

また、3つとも抗体がついてもすぐになくなるため、何度も感染、発症するという特徴があります。繰り返しかかるうちに体が強くなると考えてください。

予防と感染を広げないための対策

3大夏風邪にはワクチンもありません。飛沫感染、接触感染によって広がるため、予防には日々のこまめな手洗い、うがいを徹底することが一番です。また、タオルの共有や排便の処理でも感染するため、家庭内でもタオルを共有しない、おむつを処理した後はよく手を洗うといった意識も大切。症状が落ち着いた後も、しばらくの間ウイルスは体内に残留するので、引き続き注意してください。

登園・登校の目安

手足口病とヘルパンギーナは、出席停止が必要な学校感染症に指定されていません。熱がなく全身状態が良好ならば登園・登校が可能です。ただし、感染力の強いプール熱は、主要な症状が消えてから2日間の出席停止期間が設けられています。登園・登校は、熱が下がってから2日後を目安にしてください。一度プール熱にかかると症状が落ち着くまでの期間と出席停止期間を含め、登園・登校まで1週間はかかると考えていいでしょう。

3大夏風邪は6月頃から患者数が増え始め、幼稚園や小学校の夏休み期間中は一時的に減少する傾向にあります。しかし、夏休み明けから再び増え始め、9月まで続きます。3大夏風邪の流行が落ち着くころには、インフルエンザをはじめ、RSウイルスなど別の風邪が流行し始めるので、そちらにも注意が必要です。

教えてくれたひと

上辻 教幸先生

西岡こどもクリニック院長

昭和52年札幌医科大学卒業後、室蘭市立病院や旧国立療養所小樽病院、西岡病院で小児科医として勤務。平成2年から現職。優しいまなざしで子どもたちに接するベテラン小児科医として、お母さん・お父さんからの信頼も厚い。

医療法人社団 西岡こどもクリニック
住所:札幌市豊平区西岡4条4丁目1-1 西岡メディカルビル2階
電話:011-855-0770

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