幼稚園選び、育ってほしい姿を描いて 乗馬や英語…多様な教育方針

ポニーと触れ合う乗馬教育を取り入れている「宮ノ丘幼稚園」。年長の園児は自ら手綱を操る(中村祐子撮影)

ポニーと触れ合う乗馬教育を取り入れている「宮ノ丘幼稚園」。年長の園児は自ら手綱を操る(中村祐子撮影)

英語や水泳、アート、科学に乗馬教育―。道内の幼稚園などでは今、さまざまなプログラムが用意されています。教育方針が多様化する中、どんな園を選べばよいのでしょうか。


円形の馬場でポニーがゆったりと歩き、園舎の背後には森が広がっています。札幌市西区の「宮ノ丘幼稚園」(180人、三浦康暢園長)は牧場のようです。「自然の中、実体験を通じ子どもを育む」を理念に、乗馬やスキー教育に力を入れています。 9月中旬、年長組が乗馬に挑戦していました。乗馬指導者資格を持つ教員が付き添う中、子どもたちは怖がる様子もなく、しっかりと手綱を握り、ポニーを走らせていました。教員から「Good(グッド)」と声をかけられると、笑顔がはじけました。

三浦さんは「馬と関わることで、心と体に良い効果があります」と説明。思いやりの気持ちが養われるほか、バランス感覚も磨かれるといいます。「子どもたちが安全にチャレンジできる環境を整えたいです」と力を込めます。 英語教育に力を入れているのは、札幌市西区の「インターナショナル山の手幼稚園」(162人、菅原孝悦園長)。「生活の中で第1言語のように習得する」ことを目指して、外国籍の教員9人が指導に当たっています。

英語教育に力を入れている「インターナショナル山の手幼稚園」。外国籍の教員に教わりながら、アルファベットで名前を書く練習をする園児たち

英語教育に力を入れている「インターナショナル山の手幼稚園」。外国籍の教員に教わりながら、アルファベットで名前を書く練習をする園児たち

6歳の長男が通園する札幌市西区の主婦岡本絹代さん(41)は「子どもの将来を考えると、英語が話せるようになってほしいと思い、入園を決めました」と話します。自宅でも英語で話す姿を見て「次男も通わせたい」と考えているといいます。

札幌市豊平区の「なかのしま幼稚園」(281人、芝木孝満園長)は、心身の発達に心配のある子も積極的に受け入れています。各クラスを教員2人で担当するほか、全体を目配りするフリーの教員7人を配置。作業療法士1人も常勤しており「子どもの発達に応じて一緒に遊んだり、保護者の相談に乗ったりしています」(芝木さん)といいます。

子どもの思いをくんで最終判断を

札幌の私立幼稚園など154園でつくる札幌市私立幼稚園連合会会長の藪淳一さん(54)は、園を選ぶ際 ①どんな子に育ってほしいかを家族で話し合う ②教育方針に合う園を調べる③見学に行くーが大事といいます。「小学校生活に困らないように育てるのではなく、子どもが幸せな人生を送るためという視点で考えて」と力説します。

親と子どもで希望する園が異なる場合は「親は将来、育ってほしい姿を描いた上で選ぶが、子どもは『楽しそう』など感覚で決めます。子どもの思いをくみつつ、最終的には親の思いを優先してよいのでは」といいます。遠方の園を希望する場合は「通園が保護者の負担にならないかを考えて」と助言。園の評判については「口コミやネット情報ではなく、自分で判断することが大切」としました。

玉川大学教育学部・大豆生田教授に聞く
幼稚園選びのポイント

玉川大乳幼児発達学科・大豆生田教授

大豆生田啓友教授

「毎日わくわく通えそうか」が重要

玉川大学教育学部乳幼児発達学科教授の大豆生田啓友(おおまめうだひろとも)さん(56)は幼稚園選びのポイントとして、①子どもが「自分らしく」いられる場所か ②保育者が受容的か ③遊びを通して力を伸ばせるか―を挙げます。

①は、子どもの苦手な部分を補おうとするのではなく、ありのままで「毎日わくわく通えそうか」を見ることが大事といいます。②は、幼稚園は「心の安全基地」であるとし、子どもの個性を大切にする保育者かを判断するようアドバイスします。③は、遊びを通して「心と身体、人間関係、知的な側面を総合的に学ぶことが重要」と説明します。

幼稚園選びのポイント

文部科学省は2018年施行の幼稚園教育要領で「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」=表=を示しています。大豆生田さんは「英語や水泳など習い事はあくまでオプション」と位置づけます。「自己肯定感や意欲、協同性、やり抜く力」など数字では測ることのできない非認知能力を伸ばすことが「(成長の)基盤になります」と強調しました。

取材・文/田口谷優子(北海道新聞記者)

この記事に関連するタグ

2024
5/19
SUN

Area

北海道外

その他