子どもの予防接種 10年で種類倍増

写真はイメージ(maruco / PIXTA)

感染症の発生と流行を防ぐ予防接種。子ども向けの種類が増え、この10年でほぼ倍になった。「ワクチンで予防できる病気は予防した方が良い」という考え方の広がりや、他の先進国と比べて予防接種の種類が少ない「ワクチン・ギャップ」と呼ばれる状況を、国が改善してきた経緯が背景にある。ただ、予防接種は強制ではない。保護者がメリットとデメリットを判断する必要がある。

2歳までに計22~23回 効果・副反応を見極めて

「今日は左腕に2回、右腕に1回、あと両足に1回ずつ打ちましょう」

今月中旬、札幌市豊平区の「のえる小児科」で、1歳になったばかりの女の子が5種類の予防接種を受けた。看護師らが体を押さえ、瀬川雅史院長が手際よく針を刺していく。泣き声は4~5本目にピークに達したが、5分もすると女の子は笑顔に戻った。

5種類はヒブ、肺炎球菌、麻疹(はしか)・風疹混合(MR)、水痘、おたふくかぜ。母親(31)は「出産した産婦人科で約1時間の研修を受け、予防接種の大切さを聞いた。子どものために良さそうなので、有料(任意)のものも全部受けている」と話す。

予防接種には、国が積極的に推奨し、原則無料で受けられる「定期接種」と、費用は自己負担の「任意接種」がある。かつて、定期接種はBCGとポリオ、3種混合、麻疹・風疹混合の計10回程度だったが、その後はヒブなど5種類が加わり=表参照=、任意のロタウイルスやおたふくかぜを受ける人も増えた。

満1歳までに計15~16回、満2歳までに計22~23回の接種が必要で、種類によっては次の接種まで数日~数カ月の間を置く必要があるため、「生後2カ月がワクチンデビューに最適」(日本小児科学会)とされる。このスケジュールをこなすには、1度の受診で複数のワクチンを接種する「同時接種」が必須だ。

一方、予防接種は重い副反応を伴うことがあり、日本でも、子どもに全く予防接種を受けさせないケースがあるという。

ただ、麻疹は感染力が非常に強く感染すると死に至る危険性があり、風疹は妊婦がかかると子どもに障害が生じる可能性があるなど、ある小児科医は「できるだけ予防接種は受けてほしい」と話している。

主なワクチン

近年増えてきた予防接種のうち、小学校低学年頃までに受ける主なものの効果や副反応について、日本小児科学会がホームページ(HP)で掲載している「知っておきたいわくちん情報」などを参考にまとめた。

▽ヒブ(インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌
感染すると髄膜炎などを起こし、命を落としたり、重い後遺症が残ることも。ともに2013年に定期接種となった。14年以降、重症なヒブの患者は報告されていない。肺炎球菌はワクチンがカバーする型の発症例は大幅に減ったが、他の型の感染が増えて課題となっている。

▽B型肝炎
ウイルス感染で肝臓の細胞が壊れるなどする。予防接種の効果は20年以上続くとされるが、効果には個人差がある。

▽日本脳炎
発症すると2~4割が命を落とす。関東~西日本を中心に年間10人程度が発症している。北海道はウイルスを媒介する蚊がいないため定期接種の対象外だったが、16年に対象に。予防接種で、極めてまれにアナフィラキシー(重いアレルギー反応)や脳脊髄炎などの重い副反応を起こすことがある。

▽ロタウイルス
感染すると胃腸炎を起こし、激しい下痢を伴う。予防接種により感染の8割を予防できるが、数万回に1回程度、腸重積(小腸が大腸に入り込む病気)の副反応が報告されている。

その他の予防接種の詳細は日本小児科学会のHPを参照。予防接種に関する問い合わせや副反応の相談は、各市町村の予防接種担当窓口へ。

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