留萌の待機児童近く解消 19年の道内最多から一転 状況改善の背景は

すまい留での保育の様子。懸案だった留萌市内の待機児童解消まであと一歩だ

すまい留での保育の様子。懸案だった留萌市内の待機児童解消まであと一歩だ

【留萌】市内で、保育所に入所を希望しても満員で入れない「待機児童」が27日現在、1人になっている。この子も7月に入所できる見込み。2019年のピーク時は42人に達したほか、道内最多人数となった時期もあった。そこから状況を一転させ、待機児童解消へと向かった背景を探った。

市内の待機児童問題が顕在化したのは18年ごろで、同年4月時点で13人だった。急激に増えて19年4月の38人は道内最多。その後も増加し、同年5月と10月には過去最多となる42人を記録した。

待機児童の人数を押し上げたのは保育士不足と、共働き家庭増加に伴う低年齢児の入所希望増という二つの要因だった。

保育士が、夫の転勤や出産などで市を離れるケースが18年ごろ特に多かったという。加えて、現役の保育士が待遇の良さを求めて都市部に流出し、それを補う新卒保育士らを思うように確保できなかった。また、地元高校を卒業後、札幌や旭川の専門学校などに通い、保育士資格取得後に現地で働き始める人が増加したことも一因とされる。

0~2歳児の入所希望の急増が追い打ちをかけた。出産後1年以内に、収入の確保や失職を防ぐなどの理由から復職するケースが多いためだ。

国の基準で保育士1人が担当できる子どもの数は0歳は3人、1~2歳は6人、3歳は20人、4~5歳の場合は30人と決められている。待機児童数が最多だった19年5月、希望者全員が入所するために必要な保育士は38人程度。しかし市が認可する民間の3保育所には30人しかおらず、まかないきれなくなっていた。

預け先なく働けぬ

「人口2万人の街に待機児童がいるとは…」「預け先がなくて働けない」。市民からは不満の声が上がっていた。事態を打開するため、市は19年8月に「保育推進室」を立ち上げ、保育所開設に動きだした。

市は、保育所運営について、育児支援を市内で行っているNPO法人「おたすけママくらぶ」に打診。さらに、市中心部にあるビルの一部を1200万円で改修した。同年12月に小規模保育事業所「すまい留(る)」を開所。待機児童が最多だった同年10月の42人のうち、41人もいた0~2歳児から16人を受け入れた。

市内の歯科医院で働く小松麻紀子さん(32)は19年8月、間もなく1歳を迎える長女の怜ちゃん(2)が待機児童となった。「ほかの親から話は聞いていたが、やっぱりかという気持ちだった」と振り返る。すまい留への入所が決まり、「娘の誕生後、仕事を休んでいたが、おかげで復職し、また社会参加できた」と感謝する。すまい留の入所者は21年3月、過去最多の28人を数えた。

少子化も好転材料

少子高齢化が状況を好転させた面もある。市内の0~2歳児の人数は18年3月末で417人だったが、20年には346人になった。入所希望者減少と比例し、必要な保育士数も減った。ピーク時に預け先がなかった子どもたちは、すまい留や各保育所に入所できるようになった。待機児童は徐々に少なくなり、最後の3歳児1人が希望の保育所に入所できれば「ゼロ」となる。

待機児童解消の大きな力となったNPO法人おたすけママくらぶには、保育士資格を持つ人が10人ほどいる。約10年前から保育場所を借り、時間制の託児サービスを行っていた。理事で、すまい留の西川知恵園長は「困っている母親たちに救いの手を差し伸べたい。待機児童など育児不安を理由に、子どもを産みづらくなる状況は避けなければならないと思った」と、小規模保育事業所運営に乗りだした理由を明かす。

市の今年5月の保育所利用状況によると、3保育所とすまい留の計4施設の定員279人に対し、入所は252人で、余裕がある状況。市子育て支援課は「現在は児童数と保育士数の均衡がとれている」とする。ただ一方で低年齢児人口の減少が進み、人口減少に拍車がかかるという別の問題が懸念されている。

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