児童館、18歳未満の居場所に 函館市が少子化・施設老朽化で再検討

函館市の神山児童館の体育館で遊んで過ごす子どもたち

函館市の神山児童館の体育館で遊んで過ごす子どもたち

子どもたちが、遊んだり運動したりして自由に過ごす児童館のあり方について、函館市が再検討を進めている。少子化に伴う利用者減少や施設老朽化などが課題とされる中、これまで利用の中心だった小学生だけでなく、「すべての18歳未満の子供の居場所」としての役割を模索しており、地域住民や民間団体との連携が、課題解決のかぎを握りそうだ。

貧困や虐待、福祉課題に対応/6月にも成案

児童館は児童福祉法に基づき、遊びを通じた子どもの健全な育成を目的に設置されている。市内では人口の増加に伴い1960年ごろから設置が進められ、現在24施設。1月下旬の週末、市内の神山児童館を親子で訪れた幼児から小学生は約20人。乳児スペース、読書室、体育館などで思い思いに過ごした。神山小の6年生、二本柳彩花さん(12)は「家にいるとスマホを眺める時間が長くなる。冬も健康的に過ごせて、学校と違う友だちに会えるのも楽しい」と笑顔で話した。

指定管理者制度を導入した市内3施設を運営する学校法人野又学園(函館)は、神山児童館(2012年完成)では長年中学校で教壇に立ってきた斎藤貴明館長を中心に中学校と連携を強化。閉館後の約1時間、中高生が利用しやすい時間帯を設けた。その結果、2022年度の来館者はコロナ禍前を上回る1万5千人に上った。

昭和児童館は近隣の函館商業高と、富岡児童館は活動が活発な地元母親クラブとそれぞれ連携。中でも昭和児童館では函商高バレーボール部員に利用者がバレーボールを教わることができるなど特色を打ち出す。三つの児童館を運営する同学園の事業責任者の松田賢一さんは、「教員OBや民間など地域から的確な人材を配置することで地域固有の課題に対応することができる」と説明する。

昨年3月、厚生労働省の専門委員会が公表した「児童館のあり方」には、「中高生世代などの支援」「貧困、不登校、虐待など福祉的な課題への対応」「児童館機能の強化」などの必要性が盛り込まれた。これを受け、函館市は利用層の偏りの是正や施設老朽化への対応のほか、市北部や北東部への市街地拡大、小学校再編の動向を踏まえた適正配置などをポイントに検討作業を進めている。

3歳の長男と日吉町から神山児童館に通う主婦の加藤沙紀さん(40)は「幼児と児童のスペースが分かれていて床暖房などの設備も整っているのでここに来ている。送迎は負担になっているので、小学校に上がったら近くの施設に通わせたい」と話す。同館の斎藤館長は「独自色を打ち出せるのも、建物が比較的新しく、条件に恵まれたから」と指摘する。

24施設のうち築年数が50年を超す施設が11あり、13施設が法定耐用年数を超えている。市は20年に3施設を統合し、大森浜児童館を開館した一方で、「当面は安全安心に児童館を利用することができるよう必要な補修を行う」としている。

市は利用者や、地域住民への意向調査やパブリックコメントを踏まえ、6月にも成案をまとめる。次世代育成課は、「学校の空き教室の活用や、児童館のない校区に職員らを派遣して子どもの居場所をつくる『アウトリーチ型』のサービスを含め、既存の形にとらわれずに検討したい」とし、民間団体や地域住民との連携を模索していく考えだ。(大庭イサク)

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