「PTA改革」釧路でも 強制加入や役員押し付け問題に

​釧​路​市​立​湖​畔​小​の​PTA​が​、​手​挙​げ​方​式​で​実​施​し​て​い​る​絵​本​の​読​み​聞​か​せ​ボ​ラ​ン​テ​ィ​ア​

​釧​路​市​立​湖​畔​小​の​PTA​が​、​手​挙​げ​方​式​で​実​施​し​て​い​る​絵​本​の​読​み​聞​か​せ​ボ​ラ​ン​テ​ィ​ア​

全国でPTAの強制加入や役員の押し付け合いなどが社会問題化する中、釧路市内のある保護者から北海道新聞釧路報道部のココカラ取材班に投稿が寄せられた。「小学校のPTAで強制的に委員にさせられ、嫌な思いをした。他の学校はどう運営しているのか調べてほしい」。取材を進めると、昨今のPTA問題やコロナ禍をきっかけに、各学校では改革が進んでいた。

活動参加は希望制、入退会自由の学校も

9月上旬の午前8時半ごろ。釧路市立湖畔小(340人)の1年生の教室では、保護者が児童たちに1冊の絵本をプロジェクターを使って読み聞かせていた。PTAの生活ボランティアの活動の一つだ。

同小のPTAでは、近年取り沙汰されるPTA問題を受けて2019年から段階的に改革に着手。保護者全員が一人一役何かしらの役職を担う制度をやめ、会長、副会長、監査の三役以外は全て手挙げ方式に変えた。

まず「運営委員会」のメンバーを募り、委員会で年間の活動内容を決める。それから花壇整備やバザー、絵本の読み聞かせなどの活動別にメールで希望する保護者を募る形だ。学級委員は「学級ボランティア」に変え、希望者がいない学級には無理に担当を置かない。

多くのPTAでは学級から必ず数人の学級委員を選出し、通学の見守りやベルマーク回収など委員会別に複数の役員を置いている。共働き家庭が増えて、主に平日に活動するPTA活動を敬遠する人も多くなり、役員決めの懇談会で沈黙が続くことも。PTA改革を進める湖畔小の種市文彦校長(58)は「懇談会が長引くこともなくなった。意欲のある人が集まり活動は盛り上がっている」と話す。

コロナ禍でPTA行事の中止が相次いだのを機に、運営体制を見直す動きも出ている。市立鳥取西中では昨年度から学級役員制度をやめ、会長らが中心に活動を企画して活動ごとに参加者を募っている。市立共栄小でも昨年度、バザー担当など一部の委員会を廃止し、希望者が活動に参加する形に変えた。

そもそもPTAとはどんな組織なのか。「学校の活動の一環と誤解されがちですが、本来は学校とは全く別の任意団体です」とPTA問題に詳しいライターの大塚玲子さん(51)=千葉県=は説明する。PTAは「Parent(保護者) Teacher(教職員) Association(組織)」の略で米国で生まれた。日本では戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が全国の学校にPTAを作らせたのが始まりとされる。保護者と教員が子どもたちのために協力する会で、入退会は自由。市民団体などと同様、加入する義務は無いという。

本来は任意加入であるのに、多くのPTAでは入会の意思確認がないまま保護者全員に加入を促しているのが実態だ。市内では入退会を自由にする動きも出始めており、市内のある中学では今春、PTAに加入するかどうかをWebフォームで申請する方式に変更。PTA非加入者に対しては、PTA活動に使う事務用品費などを含む金額を徴収しているが、一部の保護者からは反発もある。PTA非加入の保護者の女性は「組織に加入していないのに、PTA活動費の一部を負担するのは納得できない」と納入していない。

ライターの大塚さんは「全国では入会意思を確認するPTAが増え始め、PTA改革はやっとスタート地点に立った状態。公費で負担すべき学校運営費をPTA会費でまかなっているケースもあり、グレーな体制が常態化している」と問題の根深さを指摘している。(長谷川史子)

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