登別市議、長男連れ登庁 議会図書室からオンラインで委員会参加 専門家「子育て中でも権利保障を」

長男を連れて登別市役所に登庁し、オンラインで委員会に出席する宮武祥子市議

長男を連れて登別市役所に登庁し、オンラインで委員会に出席する宮武祥子市議

【登別】30日の市議会観光経済委員会で、1歳半の長男を連れて登庁した宮武祥子市議(36)が初めて議会図書室からオンラインで出席した。女性の政治参加や多様な出席形態を認める同市議会の改革で可能になった。わずか数メートルしか離れていない別室からの参加という異例の出席方法に、専門家は「議員は平等に審議に参加するのが望ましい。子どもがいても、その権利が侵害されない体制を整えるべきだ」と指摘する。

30日午後1時。長男を連れた宮武氏はパソコンに向き合った。玩具や絵本が置いてある議会図書室で、他の委員が市道視察に出た様子などを、子どもをあやしながら約40分間オンラインで見守った。同様の方法での出席は2回目。初回は自宅から参加したが「集中できない」として今回は登庁した。ほかにも、他議員が新型コロナウイルス禍の影響で利用したケースが6件あった。

宮武氏は「子どもは泣いたり動いたりして周りに迷惑をかけてしまう。委員会室に連れて入ることは難しいので、オンライン出席できて助かっている」と話す。

改正前の地方自治法では「議会は住民に選挙された議員が当該団体の公の問題について議論する場」「議題と関係のない事項に言及し、もって議場の混乱を招くことがあってはならない」などの定めもあった。登別市議会には第三者が議場や委員会室に入ることを禁じる規則はなく、入場に当たっての特段の取り決めはないという。

同市議会事務局の山本直人総括主幹(47)は「最も重要なことは議事進行が着実に進むこと。子どもが泣き始めて議事が止まることがあってはならない。そのためにも、子育てなど事情がある議員が審議に参加できるようオンラインの仕組みを整備してきた」と話す。

同市議会は新型コロナウイルス感染拡大などを受け、2021年に条例を改正し、オンラインでの委員会出席を可能にした。今年2月には子育て中の議員への配慮から議会図書室に玩具を配置した。

総務省が1月に行った調査では、議員のオンライン参加を行ったのは全国106機関に上った。全国市議会議長会調査広報部は、「子連れで本会議や委員会に出席したケースは聞いたことがない」と言う。

女性の政治参加に詳しい駒沢大の大山礼子教授(政治制度論)は「登別の取り組みは評価できる。外国には議場に子どもを連れて参加する例もあり、さらに規則を見直して子連れ出席を可能にする選択肢もある」と話す。

室蘭工業大大学院の清末愛砂教授(憲法学)は「市民の代表たる市議が『子どもがいる』『介護が必要』などのやむを得ない理由で、他議員と同等に活動できないことがあってはならない。議会出席時には、子どもや介護のためのシッターやヘルパーを配置するなどの対応が求められる」としている。(古田裕之、村上真緒)

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