小児がん治療でワクチン効果減 再接種 北見市が助成検討

ワクチン再接種に関する他の自治体の資料に目を通す北見市内の夫妻。道内では再接種の助成を行う自治体が増えつつある

小児がんの治療で過去に打った定期予防接種の効果が失われたり低下したりした子どもたちへのワクチン再接種の費用助成について、北見市は支援策を検討する意向を示した。再接種は原則、公的助成の対象にならず、場合によって30万円近くが必要になるという。オホーツク管内では美幌町と紋別市が助成制度を設けており、他の自治体に広がるか注目されている。

「望んでなった病じゃないのに、どこまで身を削ればいいのか」。昨春、長女(5)が急性リンパ性白血病と診断された北見市内の男性会社員(39)は、こう吐露する。札幌や北見で抗がん剤治療などを行い、現在は寛解状態にある。

担当医の説明では、長女がこれまで定期予防接種で得た免疫は、抗がん剤治療により大半が消失か低下する可能性があるという。再接種は任意で、7種類ほどのワクチンを打ち直すと20万~30万円の出費が見込まれる。妻(39)は看病のために退職を余儀なくされ、再接種は家計の重荷になるが、男性は「娘は抵抗力がなく、みずぼうそう一つでも命に関わる。ワクチンを再接種させたい」と話す。

道感染症対策課が今年4月に行った調査によると、道内で再接種を助成しているのは22自治体。うち美幌町は2015年、紋別市は20年に制度を設け、2市町とも今のところ助成事例はないという。

北見市では、9月の定例市議会で森谷隆文氏(かけはし)がこの問題を取り上げ、市は「再接種時の支援策を検討したい」と答弁した。ただ、市担当者は、北海道新聞の取材に「自治体間で助成内容に差が出ると公平性を欠く。本来は国が助成すべきだ」と漏らす。

小児がん患者の親らでつくる「がんの子どもを守る会」(東京)は、再接種の公的助成は全国的に広がっていると説明。小児がん治療に対応できる医療機関は都市部に集中し、特に地方在住の患者家族の負担が重くなりがちだとして「自治体が助成制度を設ける意義は大きい」と指摘する。(山田健裕)

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