認可保育園、進む定員割れ 札幌1366人 少子化の中、市は施設拡充 なお潜在的待機児童も

本年度当初は定員の約半分だった札幌市東区のモエレはとポッポ保育園の0歳児クラス=2日

札幌市内の認可保育施設で定員割れが広がりつつある。市が保育施設の拡充を続ける中で少子化が進んだことなどが主な要因で、2021年度に施設の総定員が初めて利用希望児童数を上回り、22年度には1366人の定員割れが出た(4月1日時点)。一方、保育士不足で定員まで受け入れられない施設もあるなど、希望する施設に入れない潜在的待機児童は解消されていない。定員割れが続けば施設の経営悪化にもつながりかねず、市は待機児童対策の転換を迫られている。

「5人も欠員が出たのは初めて」。札幌市東区の「モエレはとポッポ保育園」の細谷恵園長は、こう言い表情を曇らせる。今年4月入園の0歳児は定員12人に対し7人。その後、3人が途中入園したが、今後も定員割れの不安は尽きない。

同園は市の要請を受け、15年度に全体の定員(0~5歳児)を90人から100人に増やした。だが少子化の進捗(しんちょく)などもあり、周辺の保育需要はその後、減少。保育施設の収入は実際に通う児童数で決まるため、同園では0歳児が1人減ると月収が約20万円減るという。細谷園長は「このままでは、経営に影響が出かねない」と気をもむ。

札幌市の認可保育施設の需給バランス

市は「待機児童ゼロ」を目指し、施設の整備を急いできた。市内の認可保育施設は22年度554カ所、総定員3万5610人。18年度に比べて施設は約3割、定員は約2割増えた。これに対し利用希望児童数は同年度比約1割増の3万4244人。全体で1366人希望が少なく、定員割れ施設の割合は65%に上る。

札幌市私立保育連盟の菊地秀一会長は「市が定員を増やすことを優先し、施設が偏在している」と指摘する。例えば、モエレはとポッポ保育園のある東苗穂地区は01年ごろ、宅地開発で子育て世代の転入が増え、保育施設が続々開園した。だが子どもの成長などで保育需要が減り、定員割れの一因になってきたのだ。市子ども未来局は「地域ごとのニーズを捉え、きめ細かに施設の整備計画を調整したい」とするが、定員と希望者数の推移の見極めが容易でないのも事実だ。

一方、保育士不足も深刻化している。市が20年度に市内の認可保育施設などを対象に行った調査では、36%が保育士が「不足している」と回答。保育士不足で定員の児童数を受け入れられない施設もあり、希望する認可保育施設の入所を諦める「潜在的待機児童」は今年4月1日時点で1201人に上っている。

市内の30代女性はこの夏、次女と三女の預け先が見つからず、職場で取得している育児休暇の延長を覚悟したという。「7年前に長女の保育所を探した時より施設は増えたが、(保育所を探す)『保活』の大変さは変わらない」と訴える。

新型コロナウイルスの影響もあり全国的に少子化は加速し、定員割れはさらに広がる可能性がある。保育行政に詳しい奈良女子大の中山徹教授(都市計画学)は待機児童対策に関し「行政は受け皿の量の確保から質の改善に切り替えるべきだ」と強調。施設への委託料を維持した上で、保育士1人が受け持つ子供の数を減らすよう提言している。

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